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ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
by jicperformingarts
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2018.3.31 マリインスキー・バレエ『バヤデルカ』

オレーシア・ノヴィコワ
ウラジーミル・シクリャローフ

 3/30サマーラ、4/1ウファの間に(余裕のある方は地図をご覧ください)ペテルブルクを挟むのは馬鹿としか言いようがないのですが、行った価値はありました。

 個人的にノヴィコワが好きなので、眉が濃すぎたり口紅の色がベージュだったりで、メイクがかなりおばさん臭かったのには目をつぶります。
 昔インタビューで、一番上手な群舞になりたいと語っていたような気がしますが、その言葉通り、控えめに、ひっそりと神殿の奥に住まう巫女の風情です。大僧正に言い寄られるところも、嫌悪感というより混乱がまず先に出てきます。特にロシア系だと、これ以上近寄ったら神罰が下りますと言わんばかりに、巫女の高潔さで、大僧正を軽蔑混じりにはねつける演技が王道なのですが、ノヴィコワのニキヤはそこまで強くありません。抱きすくめられて半ばパニックになりつつ、必死に振り切り、震えそうにこっち来ないでオーラを出す感じでしょうか。上司のセクハラ被害に遭う女性社員のようで、妙な生々しさがありました。
 という場面からの、ソロルとの逢引の場面です。前述の通り、かなり内向的なニキヤ像だったのが、ソロルを見つけた瞬間、大きく上体を逸らしてまったり陶酔してから、ソロルに飛び込んでいったので、その豹変ぶりに驚くとともに、彼女にとってソロルがどんな存在だったかが伝わってきます。
 前後しますが、生々しく見えるのは、単に内向的というより、不器用で、感情の起伏を上手くコントロールできなそうな人物描写だったからかもしれません。第1幕2場でガムザッティに腕飾りを与えられそうになるところも、大体のダンサーは、笑顔で固辞するのですが、彼女の場合は本気で困ったような(嫌そうにも見える)顔をしますし、ソロルが愛を誓った相手は自分と主張するところも、必死に自分を奮い立たせるかのようです。例えば、ヴィシニョーワがここで愛される女の輝き全開になるのとは対照的です。

 踊りそのものは堅実に正確です。花籠の踊りの終盤も、音にピッタリはめつつ、ピケとルティレを反復していきます。第3幕のスカーフを掲げての両回転ピルエットも、近年なかなかお目にかかれないレベルで軸があまり崩れません。上体も常に引き上がっていて、第3幕、シクリャローフにサポートされたままルティレで立って、そのまま自立するところは、ただ軸がぶれないだけでなく、本当に宙に浮いているようで、鳥肌が立ちました。
(褒めちぎり過ぎるのも客観性に欠けるかと思うので一点だけ、最後の最後のコーダの、アラベスクのまま後退するところで、一瞬だけ集中が切れたかな~という気はしました。)。
 ただ、間の取り方が独特で、手に独特のニュアンスを持たせつつ(純粋にクラシックの第3幕では控えめです)、物言いたげに指先を見つめる様は、ワガノワ特有の、頭から首・肩の美しいラインと相まって、充分に個性的な演技・踊りです。また、第3幕では、時折うっすらほほえんでいるように見えるのが意外でした。

 ソロルはシクリャローフです。演技自体は王道に勇壮な戦士なのですが、その演技に違和感がありませんでした。彼については柔和な王子様の印象が強く、ソロルはどうなのかなー、と思っていたので意外でした(ファンの方すみません。偏見でした)。爆走からの飛距離ある跳躍など、踊り自体も調子が良さそうです。サポートも安定感も増して、見ていて戦士でした。ソロのフィニッシュで、上体を反りすぎるところは、間延びするので個人的にはやめて欲しいですが。。。

 ガムザッティは、アナスタシア・マトヴィエンコ。特に好きなダンサーではないですが、そのプロ根性は素直に尊敬します。フェッテ前のピルエットで軸が崩れてからの軌道修正力はさすがです。

 第2幕のキャラクター・ダンスの中では、インドの踊りが特に良かったです。オリガ・ベーリクとエニケーエフが、二人とも背中の柔軟性とバネが相まって、圧倒的に迫力満点でした。

 第3幕のトリオは、レナータ・シャキロワ、ヤナ・セリナ、永久メイさん。シャキロワは、ピルエットでぐおんぐおん回ったついでに軸が崩れまくってましたが、それでも手拍子が起こる躍動感です。そもそもこのソロって手拍子起きるもんだっけ?とは思いつつ、第2・3ソロのセリナと永久さんがしっかりまとめてくれたので、秩序は保たれました。笑 
 永久さんは、楚々とした柳のような手足含め、ロシア人の考えるいい意味での「日本美女」の幻想にはまる容姿・踊りなので、今後も期待です。


by jicperformingarts | 2018-04-04 07:35 | 公演の感想(バレエ)
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