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ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
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2012.03.10 ハンブルク・バレエ「椿姫」

アエロフロートでバレエめぐり~ハンブルク編~

段々シリーズ化してきたアエロフロート就航都市でのバレエ公演の感想ですが、今回はハンブルクです。2012年3月現在でモスクワ-ハンブルク間のアエロフロート直行便は一日一本です。ただ、往路の成田-モスクワ-ハンブルクの接続は悪いです(復路のハンブルク-モスクワ-成田は丁度いいのですが)。


シルヴィア・アッツォーニ
アレクサンドル・リアブコ


既にマリインスキー国際バレエフェスティバル鑑賞の旅に突入しているのですが、この公演についてはどうしても書きたかったので、書きます。アッツォーニの「椿姫」は、前回の来日公演の時見逃してしまったので初めて観ました。今まで、この役には強さ・激しさが必須と思っていたのですが、彼女のマルグリットはとても儚げ。

ノイマイヤー版の「椿姫」の特徴の一つがマノンとデ・グリューが登場するところですが、あらすじをみると、「マノンのような人生を送ることを恐れるマルグリット」云々とあります。そもそも全然違うキャラクターなので、今一つ腑に落ちてなかったのですが、今回、アッツォ-ニのマルグリットを観ていて、マノンの、自分が死んでいく時に愛する人を道連れにする、という部分のことかな、と思いました。たとえ愛する人を破滅させることになっても、独りで死んでいくのは怖い、という死に至る病を得た女性の心細さ、そしてマノンをどこかうらやましく思っているかのような表現のためかもしれません。同時に、そういう彼女の切なる願いは、べったりとした白粉などグロテスクなメイクを施されたマノンの姿をとることで、嫌悪すべきものとして描かれます。今さら男の人に自分の身の上の恐怖を明かしてすがりつくことを許さない、体一つで社交界を渡り歩いてきた彼女なりのプライドも感じたのは行き過ぎの解釈でしょうか。
全幕を通して度々マノンが現れますが、アルマンの父が、マルグリットにアルマンと別れるように頼みに来る場面では、理性からアルマンを思いやって別れを承諾しようか迷うマルグリットの隣に付きまとうマノンからは「アルマンから離れないってあなたが言えないなら私が言ってあげるわよ」という声が聞こえてきそうでした。結局、マルグリットはそんなマノンを文字通り押しやって、アルマンとの別れを承諾します。
一方で、終盤で現れるマノンはおそらく沼地のシーン(流刑後、更に逃亡してマノンが死につつある場面)ですが、この時マルグリットはマノンへの羨望を隠しません。死が目前に迫って、既にアルマンに会いに行けないくらい衰弱して初めて、どうしようもなくアルマンに側にいてほしいと思う気持ち、そしてぱったり倒れて息絶える姿がとても痛々しい。ケバケバしい化粧を落としてデ・グリューと踊るマノンも、どこかマルグリットを憐れんでいるようです。

とマルグリットとマノンの軸で感想を書いてしまいましたが、もちろん、アルマンとの演技も濃かったです。この一週間前にヨハン・コボーの「ロミオとジュリエット」を観て、こんな熱いダンサーは久しぶりだ~と思っていたのですが、いましたねここにも愛が間歇泉の男性が!(笑)この二人のドラマを負ううえで欠かせないのが3つのパ・ド・ドゥです。
まず第一幕の「青のパ・ド・ドゥ」では、熱烈に愛を訴えるアルマンと、段々それに絆されるマルグリットが描かれます。高級娼婦である彼女にとっての最大の武器であり盾だったのか彼女の艶やかな笑みですが、それを捨てた瞬間が、アルマンに心を許した時ではなかったかと思います。アルマンの激しさに、胸元の椿が吹っ飛んでしまい、アルマンに椿を手渡すはずの場面はどうするんだろうと思っていたら、そこは上手く投げキッスで代用してました。
次の「白のパ・ド・ドゥ」は、マルグリットがパトロンを捨ててアルマンを選んだ後の、恋人同士の幸福の絶頂の瞬間です。この幸福感あふれる時間がなければ、破局後アルマンは、あのマルグリットが自分を愛してたなんて夢だったんだ~と自分を納得させられてたんじゃないか、と思うと皮肉です。そんなマルグリットは、幸福感にあふれつつも既にそれを謳歌する力がなく、このまま死んでしまいたい、という声が聞こえてきそうな儚さでした。実際(誤解を招く言い方ですが)このまま死んでしまった方が、幸せだったんじゃないかなあと思います。
そして最後が「黒のパ・ド・ドゥ」です。破局後、アルマンのあてつけに耐え兼ねマルグリットが訴えに来る場面です。通常、この場面ではどのバレリーナも激しさ大爆発なのですが、アッツォーニはここでも儚げです。逆にリアブコ演じるアルマンが激しすぎて、そんな乱暴に扱ったらマルグリット死んじゃう。。。と思ったほどです。病で体が弱って心も弱ってアルマンの激情に流されてしまったマルグリットでした。このパ・ド・ドゥの後、眠っているアルマンを愛おしそうに見つめるマルグリットの前にマノンが現れ、マノンに奮い立たされるかのように、再びアルマンのもとを去ります。
この最後の逢瀬の後、更に混乱して自暴自棄になったアルマンは、舞踏会という公衆の面前でマルグリットを侮辱するという暴挙に出ます。結局、「マルグリットはアルマンを愛している」という点において、アルマンは誰よりも正しく彼女を理解していて、それは全く間違いでなはなかったことが重ねて皮肉です。
by jicperformingarts | 2012-03-28 20:25 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)
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