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ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
by jicperformingarts
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5/7 ハンブルク・バレエ『バレエ・リュッスへのオマージュ』

 ドイツ、ハンブルクでの公演です。ロシアではないですが、前日にサンクト・ペテルブルクでバレエ・リュッスの写真展を観ていたこともあり、とても興味深かったので感想を書いてしまいます。バレエ・リュッスとは、約100年前にパリを始め世界中を席巻したロシアのバレエ団です。ワツラフ・ニジンスキー、アンナ・パヴロワ、タマラ・カルサーヴィナ等の伝説的なダンサーを擁していましたが、それだけではなく、ピカソ、ルオー、ローランサン、ジャン・コクトーなどの芸術家とのコラボレーションが、バレエ・ファン以外の関心を集める理由なのでしょうか(音楽のチョイスも心憎いと思います。)。

『放蕩息子』
アレクサンドル・トゥルシュ / エレーヌ・ブシェ 

 主役の放蕩息子は、やんちゃなところがピッタリでした。好感が持てる役どころでは全くないので、有り金巻き上げられても「ざまあみろー」と思ってしまうのですが、巻き上げられた後のボロボロ感はすさまじく、無事家に帰り着いて、父親にまた迎え入れてもらうところでは、心底、ああよかったねと思いました。が、その直後、放蕩息子の父が、突然放蕩息子をお姫様だっこして幕となったので、余韻は吹き飛んでしまいました(笑)
 放蕩息子を誘惑して全てを巻き上げる娼婦のシレーヌを演じたエレーヌ・ブシェは、正直、冷気を放つ迫力はあまりありませんでした。が憐憫とごろか、巻き上げた金品を手下に分配する時でさえ何の喜びも見せない、心が冷え切っていそうなシレーヌで、かなり際どいパ・ド・ドゥをトゥルシュと踊っている時も、無表情に観客を見据えるころに空虚さを感じます。彼女は女王でも魔女でもなく娼婦なので、この空虚さこそシレーヌをシレーヌたらしめているのでは、という気にさせました。

『アルミードの館』
オットー・ブベニチェク 
ジョエル・ブーローニュ / カースティン・ユング
チャゴ・ボアディン / アレクサンドル・リアブコ / アレクサンドル・トゥルシュ

 発狂した後のニジンスキーを描いた80~90分のノイマイヤーの作品です。実体としてのニジンスキーをブベニチェクが、彼の影(ドイツ語が分からないので解釈違いだったらすみません)をユングが、かつてのダンサーとしての彼をリアブコ(『アルミードの館』)とボアディン(『シャムの踊り』)が、そしてバレエ学校時代の彼をトゥルシュが踊ります。また幾重にも展開する舞台構造など複雑ではありましたが、紙芝居のなかに吸い込まれるような不思議な感覚を覚えました。
 印象に残っている演出は色々ありますが、舞台手前にブベニチェク、そして床に敷かれたバックドロップを境界に舞台奥がバレエ学校時代の想い出の世界、というシーンで、バックドロップを踏み越えて向こう側へ行くところが一番気になっています。
 まだ、舞踊作品としての一つのピークは、『シャムの踊り』だったと思います。今年の世界バレエフェスティバルでボアディンのソロを観ていましたが、全幕の中で観ると雰囲気が全く違います。彼が誘いかける相手は、他ならぬニジンスキ-でした。精神病院の庭のような場所を散歩中に、ボアディンの姿がちらついてブベニチェクの中で踊りへの衝撃がムクムクふくらんで苛立って行きます。そしてついに医者・看護婦を振り切って踊り出すところは、この作品を通して一番の激しさがありました(他は全体にフワフワ地に足が付いてない感じ)。ただ、その激しさもドラマトゥルギーとしてのもので、ブベニチェクとボアディンとの二極になった分、東京で観た時のような圧倒的な求心力はありませんでした。
 ニジンスキーは、結局死ぬまで狂気から醒めることはなく、この作品も史実の通りでした。真っ白い空間にブベニチェクが孤独に立ちつくすのを観て、ああ、こういうエンディングなのかと思ったら、結局また踊り始めてスーッと幕がおりました。やっぱり、狂気の中でも踊り続けるんですね。
 なんだかダンサーについてほとんど触れていませんが、ダンサーと作品が完全に一つの世界に溶け込んでいたので、特に切り出して書くこともないかなと。でも、カースティン・ユングの一挙手一投足は渋くてかなり気になりました。

『春の祭典』
シルヴィア・アッツォーニ 
 
 ミリセント・ホドソンという方が振り付けたとのことですが、マリインスキー・バレエと良く似ているので、おそらく原典版からも近いと思います。衣装はマリインスキーのものより手が込んでいて繊細です。
 ひときわ華奢なアッツォーニが生け贄でした。内股でおどおどした彼女は輪になって踊っていても、爪弾かれ爪弾かれ、そしてある瞬間に輪の中心に追いやられて閉じこめられます。なんだかこういう罰ゲームがあったなあ、と思いますが、この過程も儀式のうち?と思ってしまうのは、不協和音が禍々しい祭典の音楽のせいでしょうか。少女のような彼女が激しく踊る豹変振りは、それまで置物のように動かなかったこともあり、まさに何かの儀式でした。しかも一発芸的な激しさではなく、舞台全体のボルテージを上げるだけ上げきるアッツォーニの見かけによらない底力がすごかったです。
 
 うっかり真面目に感想を書いていたら力尽きてしまいました。
by jicperformingarts | 2010-05-07 19:00 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)
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