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ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
by jicperformingarts
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2019.5.2(昼) ボリショイ・バレエ「眠れる森の美女」(ニクーリナ&ティッシ)

アンナ・ニクーリナ
ヤコポ・ティッシ


 エツィオ・フリジェリオのなんともまばゆい衣装と装置でした。演出はグリゴロヴィッチ版のままで、王道のクラシックの演出ではありますが、第2幕の王子登場後など若干冗長ともいえる部分は省略し、2幕構成にまとめています。一方で、第3幕のキャラクター・ダンスは、定番の、白猫と長靴をはいた猫、赤ずきんちゃんに加えて、シンデレラも登場し、クラシック・バレエとしては、やはり定番の宝石の精と青い鳥のパ・ド・ドゥもあり、見所が多い演出です。
 
 ニクーリナは、可憐さはそのままに、脚もかなり強くなり、ローズアダージョでは、プロムナード4周の後に、数秒自立する余裕もありました。安定したテクニックから生まれる品格や華もありましたが(ただ脚の上げ方はもうちょっと美しくなるような…)、ただ、今回「眠れる森の美女」は3回観ましたが、観終わって振り返ってみると、持ち前の可憐さ以上の、練り上げた演技があるかというと若干疑問符です。

 ティッシは、ジャンプ力もありますし、所作の端々に隙はありますが、真面目そうで好感が持てる踊りです。サポートも丁寧で、第3幕のグラン・パ・ド・ドゥのアダージョ中盤の、ピルエットからそのままフィッシュダイブ、の連続に挑戦したのはこのペアだけでした。
 
 リラの精のアレクサンドラ・トリコーズは、この日デビューでしたが、技術的にはほとんど減点要素はありませんでした。長身ですがティンカーベル風というか、可愛すぎて、善の妖精の親玉感は今一つだったのですが、まだ入団一年目の新人なので今後に期待です。
 
 青い鳥は、ダリア・ホフロワとヴャチェスラフ・ロパーチン。ホフロワは、技術は確かですが、やや体育会系な印象。ロパーチンは結構な年齢のはずですが、品良くまとめてきました。
 しかしこの作品は本当にソリストが多いです。書ききれないので、印象に残った踊りを挙げていくと、白猫と長靴をはいた猫が、笑い要素はあまりなく、エレガントな白猫に言い寄るが逃げられる長靴をはいた猫、で、普通に美しかったです。白猫のタマラ・ミロノワのジャンプが鮮やかでした。


# by jicperformingarts | 2019-05-14 19:20 | 公演の感想(バレエ)

2019.5.1 マリインスキー・バレエ『ドン・キホーテ』(ノヴィコワ&エルマコフ)

オレーシア・ノヴィコワ
アンドレイ・エルマコフ

 ノヴィコワのキトリは、第一幕のメヌエット(キトリ-ドン・キホーテ、バジル-花売り娘1、ガマーシュ-花売り娘2、の6人の宮廷風のダンス)も、花売り娘に言い寄り始めたバジルの肩をトントン扇子で叩くも気づかれず、ドン・キホーテにまた手を引かれて踊りに戻る等々、おとなしめのキトリではありました。しかし、狂言自殺の場面では、バジルのカミソリを、脚でバジルの胴を踏みつけ固定してまで引っこ抜こうとするなど、ところどころウケを狙ってきます。
 踊りには爆発力はありませんが、職人的で好きなダンサーです。細かいポワントワークがあるので、足先に思わず見入ってしまいます。第3幕のソロでも、スパスパとパッセをこなしていくところは、自然と拍手が起きますし、フェッテも、危なげなく後半までダブルを入れてきます。バランスにも優れているので(あまりに力みなく立つので、逆に派手さに欠けるのですが)、ドゥルシネアのソロでは、前アティチュードからアラセゴン(横)をしっかり通ってアラベスクに至る軌跡がしっかり見えて美しいです。そういえば、去年12月のマリインスキー来日公演での『ドン・キホーテ』で、レナータ・シャキーロワがここで別の振付を踊っていた記憶があるのですが、こちらは定番のソロでした。

 エルマコフは、つい最近プリンシパルに昇進し、脂ののった時期と言えましょうか。しかし、大きくふんわりした跳躍はいいのですが、いまいちビシっと決まりません。そして、リフト時のノヴィコワのポーズが美しくなかったり、リフト前にもたつきがあったり、フィニッシュが音通り決まらなかったりして、パートナリングはあまりいいとは言えませんが、美より安全を取るタイプだという安心感がありました。演技も踊りも素朴で、スペインの伊達男というよりロシア人そのまんまです。
 なお、狂言自殺の場面で生き返るところは、立ち上がらず、膝立ちでコンパクトにジャンっと決めてくれたのはよかったです。

 ドゥリアードの女王はエカテリーナ・オスモルキナ。冒頭のデヴェロッペの連続では、実際には特にぐらつきもないのですが、なぜかはらはらしてしまったり、左右非対称だったりで脚が弱くなっちゃったなあ…と思いましたが、この方の浮世離れした雰囲気はドゥリアードの女王にぴったりです。
 アムールは、ヴァレリア・マルティニュック。こなれていて盤石でしたが、もうちょっと軽やかさがほしいです。

 エスパーダはアレクサンドル・ロマンチコフ。かなり上背もあり、見栄えがします。マリインスキー比でも長い長い手脚をコントロールしきる筋力があるかというと微妙ですが、そこは俺イケメン的自信あふれる演技でカバーでしょうか。跳躍の多い酒場のソロの方が見ごたえありました。
 街の踊り子は、マリア・ブラノワ。ベビーフェイスとパワフルな跳躍のギャップが新鮮です。
 メルセデスはタチヤナ・トカチェンコ。実はあまり好きなダンサーではありませんが、この役は似合っているなあと思いました。
 
 第3幕のヴァリエーションは、アナスタシア・ルーキナは、アラベスク等のポーズはぱっと華やかに決まるのですが、全体にちょっと重たそうで、回転技の連続でも、あまりスピード感がありませんでした。



# by jicperformingarts | 2019-05-13 08:32 | 公演の感想(バレエ)

2019.4.30 マリインスキー・バレエ「結婚/プルチネッラ/カード遊び」

 ストラヴィンスキーの音楽をバレエで堪能する夕べという感じでしょうか。しかし、ダンスとしては若干物足りない演目が多く、一演目だけならいいのですが、3演目続くと、バレエファンとしてはちょっと物足りない公演でした。

『結婚』
アレクサンドラ・イオシフィディ
ワジム・ベリャエフ
アンナ・スミルノワ
マクシム・イズメスチエフ
 細かい脚本のようなものはなく、ロシアの伝統的な婚礼の準備と宴を描いた2部4場構成のバレエです。分類としては、舞踏カンタータというそうですが、音楽の造りがともかく複雑で、声楽の他にピアノ4台と打楽器群という、見慣れないオーケストラピットの配置です。歌手も、オクサーナ・シロワ、ナジェジダ・セルジュク、エフゲニー・アフメドフなど主役級が出演しました。
 振付はニジンスカ版ほぼそのままだと思いますが、男性ソリストには、ザンレール連続もあり、一部難易度上げているようです。第3~4場は、男女18人ずつ36名の群舞が、原始的ともいえるフォーメーションで、単調ながらもハードなステップを一斉に刻んでいき、このあたりは、「春の祭典」を彷彿とさせます。この作品は、上演機会があまりなく、かつ最近の過密な公演日程ではリハーサル時間も満足に確保できないのか、あまり群舞が揃っておらず、迫力が削がれてしまったのが残念です。
 花嫁役のアレクサンドラ・イオシフィディは、殆ど踊りはありませんが、立ってるだけで存在感があります。また、女性ソリストのアンナ・スミルノワの、空中でぐいぐい伸びる跳躍は見事でした。

『プルチネッラ』
フィリップ・スチョーピン
ヴィクトリア・テリョーシキナ
コンスタンチン・スヴェーレフ
 語彙はほぼクラシック・バレエの、イリヤ・ジヴォイ振付のコンテンポラリーです。「プルチネッラとピンピネッラは恋人同士だが、プルチネッラが町娘たちにモテモテすぎて喧嘩になり、その後、プルチネッラは彼に嫉妬した町の若い男たちに撲殺されるが、実際には死んでおらず、友人フルボに自分の扮装をさせて死んだふりをさせ、魔術師に化けたプルチネルラは、プルチネルラ(実際はフルボ)を生き返らせる。プルチネルラが死んだと思った街の男達は、プルチネルラに変装して街娘を口説いていたため、町中プルチネルラだらけで混乱するが、結局男たちは娘たちと結婚、プルチネルラもピンピネルラと結婚する」というコメディア・デラルテ(中世イタリアの喜劇)風のお話を、洗練された衣装・装置でお洒落に見せました、という作品です。
 作品全体は薄口ですが、聡明そうなテリョーシキナ演じるピンピネッラが、プルチネッラと信じて疑わず幸せそうに踊っていた相手は、実はプルチネッラの変装をしたフルボだった、というほろ苦さも用意されています。テリョーシキナも、町娘役のアナスタシア・ルーキナもマリア・ブラノワも、皆さんとっても愛らしい衣装であり仕草なのですが、踊りの部分が少ないです。フィナーレ部分は踊りの洪水にはなるのですが、男性陣は男性陣で、みんなプルチネッラの変装をして、ゆるゆるの白い衣装に仮面をつけているので、踊りを堪能するには、微妙に不完全燃焼です。上半身裸のズヴェーレフが張り切ってたソロ以外は、実はタイトルロールを踊ったスチョーピンでさえ印象薄です。

『カード遊び』
エカテリーナ・コンダウーロワ
ロマン・ベリャコフ
ウラジーミル・シクリャロフ
 こちらもイリヤ・ジヴォイの新作です。カードゲームをストラヴィンスキーが音楽化した作品で、キング(ベリャコフ)とクイーン(コンダウーロワ)と、そのほかトランプを模したダンサー達が踊る間をウロチョロするジョーカー(シクリャロフ)が、クイーンにちょっかいを出し、悪い気はしないクイーンが、キングとジョーカーでジャンプ合戦をさせて、クイーンはジョーカーを選び、キングはほかのトランプ達に埋もれていく、というオチでした。これも、コンダウーロワの衣装がゴージャスで素敵でしたが、これというソロ・パートはなく、基本美しくサポートされているだけです。それだけでも眼福といえば眼福ではあるのですが。シクリャロフは、クラシックほど厳格ではないジャンプで奔放に舞台を駆け巡って楽しそうでした。



# by jicperformingarts | 2019-05-12 21:30 | 公演の感想(バレエ)

2019.4.29 ベラルーシ国立ボリショイ劇場バレエ『白鳥の湖』

マリーナ・ヴァジノヴェツ
イーゴリ・アルタモノフ

 ソ連崩壊後は来日していないので、日本での知名度はそう高くないですが、公式サイトもしっかりしているし、公演予定もかなり先まで発表されているので(発表後の演目変更はありますが…)、マネジメントはしっかりしていそう、という期待を胸に、ベラルーシに突撃してきました。

2019.4.29 ベラルーシ国立ボリショイ劇場バレエ『白鳥の湖』_f0169061_18122399.jpeg
 バレエ団のレベルとしては、主役級は一国を代表する劇場にふさわしい風格がありましたが、群舞(特に男性)が弱いので、来日機会のあるバレエ団とあえて総合力を比較すれば、サンクト・ペテルブルク・アカデミー・バレエ位でしょうか。
 演出はごくスタンダードなのですが、最終幕が少し変わっていて、湖畔に戻ってきたオデットと王子のパ・ド・ドゥはなく、悪魔と王子の闘いもなく、そこそこ盛り上がってきたところで、オデットと王子は手を取り合って下手にはけていきます。舞台奥に再登場して投身するのか?と思いきやそうではなく、ロットバルドも身もだえして姿を消し、音楽の盛り上がりが最高潮に達するところは、白鳥の群舞のみ、そして嵐が去ったところで、また二人が出てきてポーズ取って幕、となります。オデットの表情からはハッピーエンドなのか判然としませんでしたが、朝日が差しているということはハッピーエンドなのでしょう。

 オデット・オディールのヴァジノヴェツは1997年入団になっているので、ベテランのようです。手首は角度つけすぎで好みではないのですが、肩は柔らかく、そこはオデット向きではあるのですが、顎を引かなかったりで、ポーズの一つ一つに美しさは今ひとつ。他方で視線の使い方は熟練されていたので、結果としてオディールの方が良かったです。しかし、32回転のフェッテは美しくない上に、無理やりダブルを入れた結果、かなり崩れてしまい、残念です。

 王子のアルタモノフは1994年入団になっているので、こちらもベテランのようです。第一幕は、うう~ん、と思ってしまいましたが、ベテランの底力なのか、ペース配分を心得ているというのか、第3幕からはとてもよく、特にマザコン王子でないところが好感度高かったです。第3幕、オディールに騙されたことを知ってから母親に駆け寄るところも、「お母さんどうしよう」ではなく、「先立つ不孝をお許しください」に見えました。オディールが正体を現してから姿を消すまで、割とたっぷり時間を取る演出なので、その間に王子も覚悟を決めたのかしら、と思いました。誓いのマイムで第3幕の幕が下りるのですが、その際も決然とした表情でオロオロ感はありませんでした。

 パ・ド・トロワはダリヤ・メドフフスカヤ、リュドミラ・ウランツェワ、ニキータ・シューバ。ウランツェワは、肩から肘、手首、指先と動きの伝わり方がなめらかで良かったです。
 道化はコンスタンチン・ゲロニク。超絶技巧!というほどではないですが、跳躍時のポーズが綺麗です。お茶目な演技で、観客にも受けていました。

 なお、バレエ鑑賞とは直接関係ありませんが、30日以内の観光の場合は査証不要になったと聞いてベラルーシ渡航を決めたものの、ロシア経由でベラルーシに入国する場合は、査証免除にならず、しかも更にロシアのトランジット査証も必要になると後から知り、存外面倒くさかったです。笑



# by jicperformingarts | 2019-05-11 18:14 | 公演の感想(バレエ)

HP更新記録(2019.4.14) :5月公演予定

5月モスクワの公演予定を作成しました。
5月サンクト・ペテルブルクの公演予定を作成しました。

 5月の公演予定を更新しました。5月始めはGWにあたりますが、モスクワのボリショイ劇場では、ちょうどこの時期に『眠れる森の美女』を集中的に上演しますし、モスクワ音楽劇場バレエでも『シンデレラ』が予定されています。どちらの演目も、バレエファン・普段バレエを観ない方どちらにもお勧めです。私も両方とも鑑賞予定です。ペテルブルクもいつも通りバレエの公演が多数予定されていますが、GW後半戦に限ってはモスクワの方が見所が多いでしょうか。



# by jicperformingarts | 2019-04-14 22:24 | HP更新記録


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