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ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
by jicperformingarts
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2019.6.1ブリヤート国立バレエ『青い鳥を探して』(於:マリインスキー沿海州劇場)

メグミ・サカノ 
エケル・フナカア
ハルカ・ウエムラ

 60分の一幕バレエです。チルチルとミチルとその仲間達の登場から、冒険中に出会う方々とのエピソードまで、ひたすら踊りで語られます。子供向けバレエでは登場人物に動物が多くなる傾向があるのですが、やはり着ぐるみは…うーん正直厳しい…、という部分あり、あと衣装もところどころ原色が強すぎて、好みではないところもありましたが、装置は全体にシックで、プロジェクション・マッピングもちゃちくなく取り入れており、青い鳥のチュチュも繊細で、演出全体でみて子供だましな印象はありませんでした。
 「母の愛の妖精」が出てくるところはこのバレエ独特な点かもしれませんが、基本的にメーテルリンクの小説に忠実な演出です。チルチル(エケル・フナカア)とミチル(メグミ・サカノさん)は、犬のチロや、砂糖、パン、ミルク、火、光の精と青い鳥を探す旅に出て、思い出の国や、夜の宮殿や光の部屋、森、庭園を旅し、家に帰ってくると、クリスマスのプレゼントに青い鳥の入った鳥かごが母親から贈られる、というものです。

 ミチルと青い鳥(ハルカ・ウエムラさん)と、日本人女性がお二人活躍していました。童話の青い鳥、という役どころなら、『眠りの森の美女』のカナリヤを青くしてもいいのかもしれませんが、この演出では意外なほど謎めいた存在に描かれています。どちらかというと、『火の鳥』から獰猛さを抜いたような感じです。また、小鳥という点では『シュラレー』のシュユンビケとも比較したくなりますが、シュユンビケの快活さともまた違います。原作の粗筋を改めて調べてみると、捕まえようと思っても捕まえられない、捕まえようとすれば苦難が伴う、捕まえたと思ったら死んでしまう、そしてまたどこからか姿を現す、という非現実の象徴ともいえる存在とのこと、ファム=ファタール性もあるのかもしれません。

2019.6.1ブリヤート国立バレエ『青い鳥を探して』(於:マリインスキー沿海州劇場)_f0169061_21492631.jpg
Photo:JIC旅行センター
マリインスキー沿海州劇場はとても近代的で美しい建築でした。


# by jicperformingarts | 2019-06-04 08:28 | 公演の感想(バレエ)

2019.5.31 ブリヤート国立バレエ『タリスマン』(於:マリインスキー沿海州劇場)

アンナ・ペトゥシノワ
バイール・ジャンバロフ
ミハイル・オフチャロフ

 ロシアは連邦制国家なので、ロシア国内にいくつか共和国がありますが、その一つ、バイカル湖沿いのブリヤート共和国にあるブリヤート国立バレエ団が、ウラジオストクのマリインスキー沿海州劇場で遠征公演を行いました。鉄道網があるので、モスクワ・ペテルブルク等のバレエ団の日本公演とは単純な比較はできませんが、『白鳥の湖』『くるみ割り人形』の定番演目から、『麗しのアンガラ』『タリスマン』『青い鳥を探して』等珍しい演目まで、全幕5演目の装置・衣装を持ってくるのは単純にすごいです。
 なお、背景として、ロシア連邦政府の施策として2019年はロシア劇場年となっており、各種イベントに加えて、ロシアの主要な劇場のロシア国内のツアーも集中的に支援されており、その一環として、ブリヤート国立バレエ団が極東ツアーを行ったものです。逆に、マリインスキー沿海州劇場というハコ(ハード)の側から見ると、ブリヤート国立バレエ団の他にも各種カンパニーが公演を行います。ロシア語版しかありませんが、劇場年のHPはこちらです。やるとなったらやはりロシアはスケールが大きいです。
 
 今回観た『タリスマン』は、ガラ・コンサートやコンクールではそれなりに上演頻度が高い作品ですが、全幕では上演されなくなって久しく、ブリヤート国立バレエ団の芸術監督の岩田守弘さんのブログによれば、今年4月に同バレエ団で新制作され、おそらく世界でこのバレエ団だけが上演している、とのことです。コンサート・ピースとしての『タリスマン』のアダージョ(アントレや男性ソリスト登場の部分等)などで一部同じ音楽が使われていますが、基本的にコンサート・ピースと全幕では別作品と思って良さそうです。

 粗筋をざっくり御紹介します。 
<プロローグ>天霊の女王アムラヴァティは、風の神ヴァイユを護衛に付け、お守り(タリスマン。これがあればいつでも天空に帰れる)の星を与えて、娘ニリチを下界に修行にやる。その際アムラヴァティはニリチに、決して人間に恋をしないよう言いつける。

<第一幕>ニリチとヴァイユが降り立ったのはインドで、若き藩主ヌレディンは、ニリチに一目惚れする。ニリチは、ヌレディンから逃げる際、タリスマンを落として行ってしまい、ヌレディンがそれを拾う。

<第二幕>ヌレディンは王の娘ダマヤンティと婚約していたが、ニリチが忘れられない。結婚式の前に、一人になったヌレディンの元にニリチが現れ、タリスマンを返して欲しいと懇願する。益々彼女の虜になったヌレディンは、結婚式の場で、ダマヤンティに婚約破棄を言い渡し、激高した王の戦士との闘いになるが、ここでヌレディンに死なれてはタリスマンを回収できない、と考えたヴァイユが魔力でヌレディンを助ける。

<第三幕>今度は、ヴァイユが僧正、ニリチが奴隷娘に扮して、ヌレディンの前に現れる。ニリチの踊りに魅了されたヌレディンが彼女を買受けようとすると、僧正は代金としてタリスマンを求める。タリスマンを手放したくないヌレディンは、僧正をへべれけにさせ、その隙にニリチを攫う(※公演会場で購入したリーフレットの粗筋には書いていませんが、ヌレディンは、僧正と奴隷娘がヴァイユとヌレディンであると看破してます)。ニリチを自分の邸宅に連れてきたヌレディンは、彼女に愛を伝え、自分の元に留まって欲しいと懇願するが、ニリチは母親との約束を破ることはできない、タリスマンを返してもらえないなら死ぬしかないと言う。苦悩の末に、ヌレディンがニリチにタリスマンを返す。彼女は天空に帰ろうとしたものの、ヌレディンの想いに心動かされ、ヌレディンの元に留まることを選ぶ。

 今回上演されたアレクサンドル・ミシューチン版は、原典版に忠実ではあるようですが、復元バレエというほど厳格ではなさそうです。例えば、原典版では、第三幕、ニリチがヌレディン袖にした後、自分が振られたことに逆上してタリスマンを彼女に投げつけるのですが、この演出では、ニリチの拒絶に傷つきつつも、葛藤の後、彼女にタリスマンを差し出します。また、上記粗筋ではさらっと書きましたが、かなりヌレディンの愛情表現は熱烈である一方、ニリチが手で制止したら大人しく距離は保つ等、だいぶ紳士的です。
 という感じで、おそらく現代人の感性に合うように、多少アレンジされていますが、全体として、衣装・装置含め、帝政時代のロシア・バレエの品格はかくありき、と思わせる王道の演出です。第二幕で結婚式を前にしたヌレディンの前にニリチが現れるところは『眠れる森の美女』の幻影の場を彷彿とさせますし、『ジゼル』のペザント・パ・ド・ドゥのような織物職人とその恋人の踊りあり、キャラクター色の強いバザールの場面ありと、プティパらしい様式がはっきり見える作品です(悪く言えば、どの場面もどこかで見た感が…)。また、四大元素として、地・水・風・火の4人の女性ソリストも出てくるあたり、プティパ以前からの帝政バレエの風情も漂いますが、どうせなら、この4人にもソロ・パートが欲しかったです。
 
 バレエ団については、身体能力がずば抜けた人がいるかといえばそうではなく、皆さん普通にミスはするのですが、上体と脚のコーディネーションに優れた人が多い印象です。そして、群舞でも6人の踊りでも、基本的な音の取り方なり腕の角度に統一感があり、まとまりの良いバレエ団に思いました。

 ニリチ役のアンナ・ペトゥシノワは、高速フェッテは美しくなかったですが(というかあのスピードで綺麗に回れる人は果たして世界中で何人存在するのか…)、腕の使い方がなめらかで、何気ない後ろタンジュなど、ポーズの一つ一つも洗練されています。自然な笑顔も魅力的です。
 
 ヴァイユ役のバイール・ジャンバロフは、第三幕の千鳥足など、見せ場が多いです。粗筋上はヌレディンの方が主役なのですが、舞踊上は同じ位の存在感です。おそらく、コンサート・ピースとしての『タリスマン』の男性ソリストもヴァイユをイメージしてる気がするので、ガラ・コンサートやコンクールでの男性の神々しい大技の数々を引きずると(同じソロを踊るわけではないのですが)、物足りない気がしますが、しかしこの役、全幕では、守護神なのに下界に降り立ったニリチを民家に放置してどこかに行っちゃうし(その隙にヌレディンがニリチを見つけます)、第三幕では泥酔してニリチを攫われるなど、失態も多いので、全幕のヴァイユはこれでよいのかもしれません。 

 ヌレディン役は、ミハイル・オフチャロフ。サポートが上手で、リフトも変なもたつきがなく、すぱっと女性が綺麗に見えるところで決まります。跳躍が特に高いわけでもなく、柔軟性やバネ含む身体的な条件はさほど良くないかもしれませんが、上体と脚のコーディネーションが上手く、大変失礼な言い方になりますが、バレエの力学を味方に付ければ、この条件でもここまでの踊りができるのか、と思いました。



# by jicperformingarts | 2019-06-02 21:09 | 公演の感想(バレエ)

2019.5.4(昼) ボリショイ・バレエ「眠れる森の美女」(ジガンシナ&スクヴォルツォフ)

クセニヤ・ジガンシナ
ルスラン・スクヴォルツォフ

 キャスト変更の嵐でした。当日のキャスト表は、オーロラ姫役はニーナ・カプツォーワで印刷されていたものの、エラータ(訂正表)が差し込まれており、ジガンシナが代役、とのことでした。
 カプツォーワ目当てだったので、プロローグはあまり盛り上がらない気持ちで観ていたのですが、観終わってみれば満足でした。ジガンシナは、昔ゆかしいソ連時代風の風貌ですが、表情がとてもナチュラルで、温かみのあるオーロラ姫でした。怪我明け、しかも直前のキャスト変更だったことも影響したのか、ローズ・アダージョの終盤では、笑顔は完全に消え、バランスに集中!の感はありましたが、基本的に指先まで美しく、非常に丁寧に踊っていました。小さめの跳躍であれば、足音はほとんどしませんでした。
 また、第一幕の初々しさから、第三幕の結婚式での大人っぽさと、オーロラ姫の変化がちゃんと見て取れました。

 逆にスクヴォルツォフはもっと表情作ってほしい、というか、なんだか憂える表情で、結婚式でも明るさが今ひとつでした。とはいえ、ザンレールの軸はまっすぐ垂直で、全般に技術は端正でしたし、第3幕のソロでは、マネージュの前で、音楽に急かされない落ち着きぶりで、ベテランにふさわしいといえましょうか。

 リラの精のアナスタシア・チャプキナは、悪くはないのでしょうが、ボリショイ・バレエのリラの精としては今ひとつだった気がします。
 そのほかの妖精さん達ですが、鷹揚の精(ぱんくずの精)のダリヤ・ボチコワは、パ・ドゥ・パピヨンがふわりと綺麗です。カナリヤのダリア・ホフロワは、ジャンプはすごいのですがこのソロで大きな跳躍(しかも複数回)入れてくる人初めてみました(笑) 勇敢の精は、エレオノーラ・セヴェナルド。今回の『眠れる森の美女』連続鑑賞で、彼女のダイヤモンドや金の精、鷹揚の精など、色々な役を観ましたが、体型ではなく踊りにどっしり感があるので、この役が一番良かった気がします。

 青い鳥のパ・ド・ドゥは、アレクサンドラ・トリコーズとクリム・エフィーモフ。トリコーズは5月2日(昼)にリラの精で観たときより緊張してるように見えましたが、おとぎ話のお花のお姫様にふさわしいおおらかさと可憐さがあり、とても良かったです。エフィーモフは、基礎に忠実でバットゥリーも鮮やかですし、空中での姿勢も美しいです。ピルエットの回転数こそ抑えめですが、これというミスもなく、実際客席からも大きな喝采を浴びていたのですが、なぜかほっとしたような表情でした。何か不安材料があったとしても、もっとどや顔していい出来だったと思うのですが。




# by jicperformingarts | 2019-05-21 07:36 | 公演の感想(バレエ)

HP更新記録(2019.5.19):モスクワ・ペテルブルク6月公演予定

6月モスクワの公演予定を作成しました。
6月サンクト・ペテルブルクの公演予定を作成しました。

 6月の公演予定を更新しました。サンクト・ペテルブルクのマリインスキー劇場では5月22日~7月21日まで毎年恒例の白夜祭のため、公演予定が非常に盛りだくさんです。観光客も増えてくる季節なので、ミハイロフスキー劇場は定番のバレエ演目が手厚くなってきた気がしますが、一方モスクワは現代作品も多く上演されます。
 特に、モスクワ音楽劇場は、ゲッケ、ナハリン(『マイナス16』≒『デカダンス』です)、インガー、プレルジョカージョ作品など、かなり本格的なコンテンポラリー・ダンスも上演されます。「きれいなロシア・バレエ」を観たい方にはオススメするのをためらいますが(笑)、元々コンテンポラリー・ダンスが好きな方であれば、ロシア人ダンサーの身体能力でこれらの作品を見ると、新鮮な感動を覚えると思います。



# by jicperformingarts | 2019-05-19 22:58 | HP更新記録

2019.5.2(夜) ボリショイ・バレエ「眠れる森の美女」(オブラスツォーワ&ベリャコフ)

エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
アルチョーミィ・ベリャコフ

 オブラスツォーワは、ボリショイ・バレエにあっては決して体格に恵まれた方ではありませんが、腕・トルソー・脚と、身体全体でどういうラインを作れば一番美しく見えるか、という研鑽の放つ輝きがありました。クラシックとしての自然な演技力もあり、目覚めの場面など、オペラグラスで表情を追いたくなりました。

 ベリャコフは本日デジーレデビューでしたが、だいぶたくましくなっていて嬉しい驚きでした。跳躍やアラベスクなどのポーズの美しさは言うに及ばず、何気ない所作や、細かいつなぎにも神経が行き届いていました。第3幕のソロは、もう少し勢いというか、音楽に負けない筋が通ったパワーが欲しいですが、それもこれから充分期待が持てそうです。

 リラの精はマリア・ヴィノグラードワ。技術的には、もしかしたら昼公演のトリコースの方がよかったかもしれませんが、デジーレを森へ導く場面やアポテオーズで見せる貫禄は、狂言回し役にふさわしい存在感でした。主要ダンサーのバランスは、この回が一番調和取れていたかもしれません。
 青い鳥は、エリザベータ・クルテリョーワとイーゴリ・ツヴィルコ。クルテリョーワは脚はスパスパ爽快に上がり、達者ではありますが体操っぽく、おとぎ話らしさは今ひとつでしょうか。ツヴィルコは、アントルッシャは腰がブレていましたが、ブリゼはきれいでした。何よりいきいきした跳躍をジャンプを観て、もうこれでいいやーという気になりました。
 そのほか、シンデレラのクリム・エフィーモフの、後ろに伸ばした脚がふわーっときれいな跳躍が眼福でした。教師のヴェトロフの指導の賜物でしょうか。
 また、ダイヤモンドのダリヤ・ボチコワが軽やかなシソンヌでよかったです。あとは、サファイヤ役のヤニーナ・パリエンコ、白猫役のユリヤ・スクワルツォフのアームス(腕)が美しく、うっとりです。



# by jicperformingarts | 2019-05-16 19:57 | 公演の感想(バレエ)


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