ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
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カテゴリ:公演の感想(バレエ)( 145 )

2017.02.26 モスクワ音楽劇場バレエ『白鳥の湖』カルダシュ&ミハリョフ

オクサーナ・カルダシュ
イワン・ミハリョフ

オクサーナ・カルダシュが好きなので行ってみました。お気に入りのダンサーだからというのもあるのでしょうか、とても満足度が高い公演でした。

 カルダシュはふくらはぎなど筋肉はしっかりしており、ザハロワに代表されるようなしゅるんとした蔦のような造形美とはまた違いますが、鍛え抜かれたアスリート的な身体の曲線はそれはそれで美しいです。2幕(1幕2場)のアダージョでは、王子と目が合う寸前で目を逸らす一方(アダージョ後半では少し目が合うようになるのですが)、オディールの時は王子を凝視する対比が心憎いです。基本的にオデットもオディールも無表情気味なのですが、オディールの時は、笑みを浮かべる一歩手前で止めているような、全然違う印象の表情でした。第4幕では、演出の妙もあるのでしょうが、許しを乞う王子を無視して立ち去ろうとするが、見捨てきれずに戻ってきて絶望に支配されつつも許しを与えるところも、大げさな表情の演技はありませんでしたが、マイムの間も含め、味わい深さがありました。
 32回フェッテは後半はシングルのみなのでスーパーテクニックがあるわけではありませんが、第2幕のソロでは、左右対称にデヴェロッペも上がるし、ポーズ一つ一つでぴたりと止まれるポワントの強さもあり、全幕通じて技術面での減点の少ない演技でした。

 イワン・ミハリョフは、スタイルの良いロシア系の中でもひときわ脚がとても長く、物腰穏やかな、おっとりお坊ちゃん王子の佇まいでした。
 濃ゆい演技というわけではありませんが、第2幕で、オデットを見つめ続けてもオデットが目を逸らし続けるのでしょんぼりしているあたりから、第3幕の「オデット(実はオディール)が自分を好きになってくれた!!」という素直な喜びに溢れた黑鳥のパ・ド・ドゥのソロ、そして第4幕でオデットに許しを乞う時もしつこく食い下がらず、ああ一応自分のやらかしたことの意味を理解してるんだな~と思わせる一連の流れから、好感度が高い王子でした(脱線しますが、この許しを乞う場面、群舞18羽+大きい白鳥3羽+小さい白鳥4羽=25羽から一斉に王子に拒否を突きつけるところは壮観です。この25羽の中心にあって、唯一明確な拒絶を示さないのがオデットです)。

 道化のサレル・アファナシエフはシベリア出身なのかな?という容姿です。東アジア系っぽいお顔の道化はちょっと新鮮です。バネのある跳躍だけでなく、回転からも若さがあふれる感じです。モスクワ音楽劇場はキャラクターダンサーが充実していますが、新たな逸材です。
 
 一方で、三羽の大きな白鳥、パ・ド・カトル(定番の演出ではパ・ド・トロワ)ではこれというソリストはいませんでした。しかし、パ・ド・カトルではいまいち地味だったセルゲイ・マヌイロフは、第3幕のマズルカでは、パートナーのスタニスラワ・アントワとともにぐいぐい前に進む疾走感がありよかったです。



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by jicperformingarts | 2017-03-20 18:11 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.02.25(夜) ボリショイ・バレエ『イワン雷帝』ワシーリエフ&ヴィノグラードワ

イワン・ワシーリエフ
マリア・ヴィノグラードワ
アルチョム・アフチャレンコ

 『イワン雷帝』鑑賞2回目です。作品に関する補足は前の投稿をご覧ください。この夜公演では、イワン雷帝を当たり役にしていたユーリー・ウラジーミロフ75歳の誕生日を記念して彼が招待されており、芸術監督のワージエフからの祝辞・花束贈呈があり、その後彼の現役時代の映像をスクリーンに流してからの公演開始となりました。

 夜公演の主役はイワン・ワシーリエフ。彼なので、跳んで魅せるところでは当然観客は沸きます。演技も迫力がないわけではないのですが、全球全力フルスイングで同じ打線というか、雷帝の狂気の変遷という点では物足りないところもありました。彼の細君のヴィノグラードワがアナスタシア役ということで、きっと昼公演では観られなかった相思相愛ぶりが観られるはず!と手ぐすねを引いて待っていたのですが、今度は、観客から観た愛情表現の度合いが、アナスタシア>>>雷帝で不均衡でした。難しいですねー・・・。
 といっても完全に演技が単調だったわけではなく、二幕冒頭のパ・ド・ドゥでは、アナスタシア懐妊中なのかな?と思わせる(史実でも子供がいます)演技、そしてアナスタシアの仇を討った後、彼は本当はもう死んでもいいんだろうなー、と思わせる狂気の笑みなど、良い所もありました。
 また、体格に恵まれたダンサーというわけではないので、階段2段飛ばしの振りや、ラストの縄を絡ませる所、そしてリフトに余裕がなく、この作品の世界観の完成度に影響を与えている部分はありました。

 ヴィノグラードワは長身で現代的なモデル風というか、美人なのですが中世ロシアの姫君としては違和感がある容姿なので、雷帝が見初めるところでは、一瞬「え?意外な好み…」となったのですが、戦争からの夫の無事の帰還を祈るソロでは、伸ばした腕の先・目線の先には、ちゃんと雷帝がイメージされていたような気がします。そして重病の雷帝を看病するところでは悲痛さも伝わってきます。また、彼女は股関節がきれいに開くので跳躍に鮮やかさがあり、その後、雷帝の帰還がした後の踊りには、演技・技術と相まって素敵な晴れやかさがありました。
 ただ、やはり清純さという点では今ひとつなので、第2幕の、霊となって雷帝と踊るところでは浮遊感はありませんでした。

 クルプスキー公は夜公演もアルチョム・オフチャレンコ。昼公演は第4ヤールス(実質6階)、夜公演は第1ヤールス(実質3階)で観ていたためか、夜公演ではアフチャレンコの跳躍を観て、エレガントに高く跳ぶなあと実感しました。ただ、より近い目線で観ても演技の淡泊さは変わりませんでした。

 その他、鐘つき男達・勝利の使い達・オプリーチニキ(いわゆる雷帝の秘密警察)などのキャストもほぼ昼公演と同じでした。この作品、筋金入りのボリショイ・ファンでない限り、主要3人以外はほぼ個体識別できません。3人の心理を丹念に描くドラマと捉えればいいのでしょうが、キーマンであるクルプスキー公が薄味だったので、ドラマとしての濃密さが足りず、舞踊的なバランスの方が気になり、主要3人とそれ以外を埋める役が欲しいなあと思ってしまいました。
 あとは、映画『イワン雷帝』のためにプロコフィエフが作曲した音楽が基になっており、オリジナル音楽ではないので仕方ないことではあるのですが、甘ったるい場面では、もっと『ロミオとジュリエット』級に甘ったるい音楽が良かったです。とはいえ、一からバレエ化された作品としては、演出含めかなり緻密に作り込まれていて見応えがあります。


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by jicperformingarts | 2017-03-09 19:02 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.02.25(昼) ボリショイ・バレエ『イワン雷帝』ラントラートフ&スミルノワ

ウラディスラフ・ラントラートフ
オリガ・スミルノワ
アルチョム・オフチャレンコ

 ソ連バレエを代表する振付家のグリゴローヴィチによるオリジナル・バレエです。16世紀ロシアで専制的な政治を打ち立てたイワン雷帝を主役にした作品です。歴史的事実をなぞってはいますが、時系列に彼の生涯を追うというより、雷帝の心が闇・狂気にとりつかれていく前半生に焦点が当てられています。
 かなりざっくり説明すると、第一幕が、即位→最初にして最愛の妻アナスタシアとの出会い(二人が結ばれるまでには何も波瀾万丈なく、気づいたら結婚しています)→戦争→病で死にかける→その隙に王座を奪おうとした貴族を粛清。第二幕は、幸せな二人の踊り→アナスタシアの毒殺→毒殺を企てた貴族達の処刑→味方のいない孤独な王座で苦しむ、という感じです。

 鬱バレエの呼び声高いこの作品を敬遠していたため、往年のスター達の名演も知らず、何の先入観もなく観ましたが、ラントラートフは熱演していました。アナスタシアと踊っているところのデレっぷりをしっかり見せてくれたので(役柄の性質上ツンしかないと思っていたので驚きました。)、彼女の死を嘆くところ、そして彼女という心のオアシスを失って、心が病んでいく過程に説得力がありました。もちろん、戦争の場面では、『スパルタクス』を彷彿とさせる力強い跳躍も見せ、君主としての風格も見せてくれました。
 第一幕・第二幕とも、身体全体を使った上での超顔芸で狂気を表現して終わりますが、第一幕の、臣下に裏切られ専制君主のプライドを傷つけられたことによる、ある意味純粋な苛烈さと、第二幕の他者を呪うような影のある表情と、違いが良く出ていました。
 なんとなくまだ若手のつもりで彼を観ていましたが、2006年バレエ学校卒ということで、既にプロ11年目。中堅への階段を順調に昇っているということでしょうか。

 というラントラートフの熱愛の相手としては、スミルノワはちょっと淡泊すぎるかなあと思いました。他の花嫁候補と並んで踊るところでは、神秘的というか他の花嫁とは一線を画す存在感があり、雷帝が一目惚れするのも納得なのですが、戦争に行った夫を心配する→無事雷帝が帰還して歓喜→病で瀕死の雷帝の身を案じて嘆く、という起伏に演技がついていっていないというか、雷帝への愛をあまり感じませんでした。
 印象的な大きい瞳をしたダンサーですが、顔のパーツの配置が微妙にアンバランスなので(すみません)、第二幕で、アナスタシアの幻とイワン雷帝のパ・ド・ドゥでは、スミルノワの顔がイコンのように見えてきてしまい、「そうかー、雷帝がいくら救いを求めても御利益はなかったかー」と思考が脱線してしまいました。そして、眼の存在感がありすぎて、意外にも精霊らしさがありませんでした。 

 ドラマ上、非常に重要な役なのがクルプスキー公です。大貴族にして雷帝の友人でしたが、密かに愛していたアナスタシアを雷帝に奪われたことから彼を憎み(実際は王位簒奪の野望もあったようですが)、彼を暗殺する陰謀に加わり、流れでアナスタシアを毒殺してしまいます。このあたりの設定は参照する資料により変わりますが、私には、陰謀仲間の貴族達がアナスタシアを毒殺するのを止められなかった、というように見えました。
 死にゆくアナスタシアとの長いパ・ド・ドゥなど、重要そうなパートも多く与えられています…が、オフチャレンコの演技からは、嫉妬・悔恨・慟哭といった感情のほとばしりが観られず残念です。彼の高いテクニックと貴族らしい品格は得がたい資質だと思うのですが、もうちょっとはっちゃけて欲しいです。


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by jicperformingarts | 2017-03-02 20:22 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.01.02 マリインスキー・バレエ『くるみ割り人形』

アナスタシア・ルーキナ
エルネスト・ラティポフ

13:00~の『雪娘』を観た後、大急ぎでマリインスキー劇場へ移動して14:00~のマリインスキー・バレエの『くるみ割り人形』、ということで、この公演は2幕から観ました。

 2014年にワガノワ・バレエ・アカデミーの公演でルーキナを観ていましたが、マリインスキーの団員としては今日がマーシャデビューだったようです。音に合わせて、伸びやかさや上体の美しさを見せるところはまだまだこれから…という感じではありましたが、容姿・体型・テクニック・華にバランス良く恵まれた若手なので、相性のいい先生に出会えれば化けるかもなあと思いました。

 ラティポフは、爽やかな容姿と踊りが魅力的な期待の若手です。さすがにソロは見事でしたが、一回リフトでミスがあったのと、回転のサポートも少々残念な出来でした。今回の旅行では、こういう系統のダンサーに遭遇する率が高かったです。

 12月31日と被っているキャストも多いですが、印象に残った方を、以下、つらつら上げていきます。雪の精はエカテリーナ・イワンニコワとニカ・ツィフヴィタリヤ。ツィフヴィタリヤ、初めてみましたが、跳躍が伸びやかで素敵です。アラビアの踊りは、31日同様、エレーナ・バジェノワでしたが、音に合わせるというより音が吸い込まれていくような貫禄がありました。トレパックも、31日同じ配役で、アリサ・ボヤルコ、アレクサンドラ・デメンチエワ、フョードル・ムラショフでしたが、ムラショフは、ジャンプの時はとても気合い入っていました(ジャンプ以外は若干流している感が…)。花のワルツでは、ヴィクトリア・クラスノクツカヤが目立っていました。



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by jicperformingarts | 2017-01-11 04:59 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.1.2 シネマ=コンサート・ホール"コロシアム"『雪娘』

雪娘:オレーシア・ガピエンコ
クパーワ:エフゲーニア・シュタネワ
レーリ:デニス・アリエフ
ミズギリ:アンドレイ・カスヤーネンコ
春の精:イリーナ・コシェレワ(キャスト表上はエフゲーニア・シュタネワ)
霜の精:ゲルマン・シュナイダー
レーシィ:アルチョム・ヤコヴレフ

 なぜ二回公演なのにトリプルキャストが組まれてるんだろう…、とか、キャスト表と違う人が踊ってるよ…?とか、懐かしのロシアの劇場の香り漂う運営でしたが、出演者のレベルは高かったです。
プログラムによると、ペテルブルクのコンセルヴァトーリヤの学生のエフゲーニヤ・ベルヂチェスカヤ(バレエ・フェスティバルにも参加して入賞しているようです)がリムスキー=コルサコフの『雪娘』をバレエ化したそうです。
 バレエ公演ではあるのですが、レーシイ(森の精)を、サンクト・ペテルブルクのテアトル・ブッフのアルチョム・ヤコブレフが演じたり、民衆には民族舞踊アンサンブルを起用したり(こちらはキャスト表には明記されてないので確実ではないですが…)と、バレエ・ダンサーで出演者を固めることはしていません。映画館とコンサートホールが一体になった会場を使っていたのですがステージが狭く、また65分の子供向けの作品ということで、時間的にも空間的にも、そしておそらく予算的にも制限が多い演出でしたが、奇をてらわず、御伽話バレエらしい振付けで、子供と彼らに同伴の親の期待には応えていたように思います。

 オレーシア・ガピエンコは、色白でお人形さんのような顔をしており、ビジュアル的にはまさに雪娘です。しっかりプロの踊りだったので調べてみたところ、タシケントの舞踊学校を卒業した後、サンクト・ペテルブルクのコンセルヴァトーリヤで踊っているようです。
 エフゲーニア・シュタネワは、ざっとネットで調べても現在の所属がわからなかったのですが、エイフマン・バレエのオレグ・ガヴィシェフとも共演しているようです。民族舞踊的な力強いステップで、雪娘と対極にある地上の娘を表現していました。
 イリーナ・コシェレワはミハイロフスキー劇場のソリストとして何度も来日しているので、ご存じの方も多いと思います。雪娘の母役で派手な動きはありませんでしたが、柔らかな腕の動き、ゆったりとしたデヴェロッペに母性を感じました。
 クパーヴァと婚約しておきながら、雪娘に一目惚れしてクパーヴァを捨てたミズギリ役は、こちらもミハイロフスキー劇場のアアンドレイ・カスヤーネンコ。舞台が狭いので、クラシック・バレエの大きな跳躍はプレパラシオンからして窮屈そうでしたが、コサック風の踊りではのびのび踊っていた気がします。
 レーリは、元ヤコブソン・バレエで現在はミハイロフスキーのデニス・アリエフ。原作オペラと違って爽やか好青年風に描かれているので、このままレーリが雪娘とくっつけばいいのにと思いましたが、婚約破棄後、レーリとまとまったクパーヴァはそれはそれで幸せそうでした。



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by jicperformingarts | 2017-01-06 19:10 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2016.12.31 マリインスキー・バレエ『くるみ割り人形』

オレーシア・ノーヴィコワ
ウラジーミル・シクリャローフ

 大晦日のバレエ公演ということで、第3幕は、指揮者・オーケストラが、サンタ帽を被って登場し、客席も盛り上がりました(ロシアのクリスマスは1月7日なのでこれからです)。同じワイノーネン版ということで、衣装・装置は、ワガノワ・バレエ・アカデミーと同じです。

 久しぶりにノーヴィコワを観ました。三児の母になって苦労しているのか、すみません、お顔は老けたなあと思ってしまいましたが、引き上がった上体と、軽やかに音を摘んでいくような踊りは健在です。金平糖の精の踊りは、音楽と彼女の個性がピッタリ合うので絶品でしたし、それ以外の、雪の場の前のパ・ド・ドゥや第3幕のアダージョでも、ポーズの一つ一つがぴしっと決まるので爽快です。
 演技面について言えば、くるみ割り人形が壊されて泣くところも、顔全体でなく口元を手で覆うなど、あまり少女らしからぬところはありました。一方で、ドロッセルマイヤーがくるみ割り人形を差し出した時も、最初は「え、かわいくない、要らない」と断ったものの、他の誰も欲しがらないないので、可哀想になって引き取る、でもその後くるみ割り人形と一緒に踊るうちに段々情が沸いてくる…という細やかな演技も見せてくれました。
 シクリャローフは、2015年の来日公演で負傷したと聞きましたが、怪我以前と変わらない水準まで戻してきたのはさすがですし、相当鍛錬したんだろうなあと思います。…サポートが微妙なところも相変わらずなのは残念でしたが…。
 第2幕(1幕2場とする演出も多いですが)、ネズミ退治から雪の場へ移行するところで、雰囲気はもう一気にロミオとジュリエットです。正直、「あ、甘ったるい…」と思いましたが、誰にでも作り出せる雰囲気ではないので、この二人の面目躍如と言っていいかと思います。

 くるみ割り人形とフランツ(フリッツ)を、女性のアンナ・ラブリネンコが踊りました。不思議に色っぽいくるみ割人形でした…(笑)
 ハレーキンはマクシム・イズメスチエフ、コロンビーヌはソフィア・イワノワ=スコルブニコワ、ムーア人はエフゲニー・コノヴァロフ。この役に求められるものは過不足なく見せてくれましたが、特に強い印象もなく…でしょうか。
 雪の精のソリストはタチアナ・トカチェンコとエカテリーナ・イワンニコワ。トカチェンコ、若いイワンニコワにはまだまだ負けない大きな跳躍がたくましいです。
 クラシック・トリオは、スヴェトラーナ・イワノワ、ヤナ・セリナ、ダヴィド・ザレーエフ。ザレーエフは昔カザンの「ドン・キホーテ」で観た伊達男の印象が強いのですが、この役では、温厚そうな微笑みの貴公子ぶりでした。イワノワもセリナもロココ風の衣装・かつらがよくお似合いで眼福です。また、スペインのオリガ・ベーリクの、軽やかに華やかなスペインも良かったです。



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by jicperformingarts | 2017-01-04 20:01 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2016.12.30 マリインスキー・バレエ『石の花』

ヴィタリー・アメリシコ
エレーナ・エフセーエワ
アナスタシア・マトヴィエンコ
アレクサンドル・セルゲイエフ

 プロコフィエフ音楽のグリゴローヴィチ演出です。元々、ソ連時代にレパートリーに入っていましたが、プログラムによると1991年以降上演されておらず、今年12月6日に復刻上演となりました。グリゴローヴィチ、90歳にして益々御活躍の様子です。

 ロシアのウラル地方の民話を基にしたバレエです。主役の石細工師のダニーラは、領主の家令セヴェリアンから石の花の花瓶を作るように依頼されているが納得のいく作品が作れず、彼の婚約者カテリーナの婚約のお祝いの最中にセヴェリアンが乱入。カテリーナの仲裁により事なきを得るが、逆に美人のカテリーナがセヴェリアンに狙われることに。そんな中、ダニーラは石の秘密を求めて地下の王国へ向かい、そして地下の王国の銅山の女王に見初められる(ここまで第一幕)。
 カテリーナは言い寄るセヴェリアンを撃退した後、ダニーラを探して旅に出る。ジプシーの踊りで盛り上がる市場でばったりセヴェリアンに出くわしてしまうが、村娘に扮する銅山の女王に助けられる。一方セヴェリアンは地下の世界へ沈められる。その後、カテリーナも銅山の女王のお膝元・蛇の丘に迷い込むが、カテリーナのダニーラへの愛と勇敢さに感じ行った銅山の女王は悲しみつつもダニーラをカテリーナと一緒に地上に返す。
…銅山の女王、とてもいい人です(人じゃないけど)。

 あらすじはざっくり上記のような感じです。ロシアの民族舞踊がそもそもアクロバットなので、民族舞踊的にも、クラシック的にも見せ場が多い演出で、とても見応えがありました。

 ダニーラを踊ったヴィタリー・アメリシコは、男性らしい踊りで、この役に合っています。しかし勇壮に踊っているより、悶々悩んでいる時間の方が長く、銅山の女王とのパ・ド・ドゥでは完全に言い寄る側の銅山の女王が主役でダニーラの影が薄いので、このあたりの逡巡もくどくど表現してくれたらいいのになと思いました。
 カテリーナはエレーナ・エフセーエワ。ダニーラとのクラシックなパ・ド・ドゥでは若干地味だったのですが、フォークロアの香り漂うほんのりコケティッシュな踊りの時は、群舞に埋もれないキラキラ感が出てくるから不思議です(同じ印象を『シュラレー』を観たときにも思いました)。しかし、第2幕、鎌を振りかざしつつ(窮鼠猫を噛むレベルの迫力ではない)、「失せろ」とばかりの表情で、顎でクイっとドアを指し示しセヴェリアンを撃退するところは、「ソビエト女性強えぇー!!」となりました。
 銅山の女王は、カテリーナより舞踊上も物語上も重要なポジションにあります。身体の線が美しいアナスタシア・マトヴィエンコが跳躍等見栄えのする技をこれでもかと繰り返すので見応えはありますが、舞台上に君臨するとまでは行きませんでした。音と動きがぴったりはまれば、プロコフィエフの音楽が味方になってくれそうなのですが、少し残念です。
アレクサンドル・セルゲイエフがセヴェリアンを踊りました。ラスプーチンのような風貌で、オフバランスで脚を派手に振り回す動きが怪し気で、彼のキャラクテール的な魅力が存分に発揮されていて良かったです。

 という感じで、主要キャラの4人に十分な見所が与えられているほか、粗筋には出てこない銅山の場面の群舞も華やかでした。また、粗筋では一文で通り過ぎる部分ですが、市場の場面は、定番の古典演目にはないロシアの市井を描いた場面で新鮮でした。民衆の踊り、ジプシーの踊り、スコモローヒ(流れ芸人)と、これでもかという位、踊りづくしです。若いジプシーのナイル・エニケーエフが強烈な存在感を放っていました。オリガ・ベーリクも、まだ入団数年の若手だったと思いますが、ジプシー達を従えて踊る貫禄がありました。また、実は、第一幕は男性群舞の弱さに愕然としていたのですが、第2幕のこの市場の場面では、男性ダンサーも女性ダンサーもとても楽しそうに踊っていて良かったです。
 最近はヨーロッパの劇場のような豪華な衣装・装置がロシアでも増えてきているので、今回の『石の花』の旧ソ連そのままの簡素な衣装・装置はなんともレトロですが、元々、ロシア・バレエは衣装・装置ではなくダンサーの水準で勝負だったことを思い出しました。



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by jicperformingarts | 2017-01-03 07:44 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2016.12.29 ワガノワ・バレエ・アカデミー『くるみ割り人形』

ウラーダ・ボロドゥリナ
ルスラン・ステニューシキン

昨年日本公演がありましたが、ワガノワ・バレエ・アカデミーによる『くるみ割り人形』です。主役二人については未来のスター誕生!というほどでもなかったのですが、全体の雰囲気としてはとても良い公演でした。

主役のマーシャはウラーダ・ボロドゥリナ。すらりとしたクール・ビューティーですが、踊りに勢いがありすぎて、ピルエットも、決まるときは鮮やかなものの軸が乱れることも多かったり、また、王子・カヴァリエールの皆さんがサポートしにくそうな印象でした。
王子役のルスラン・ステニューシキンは、今年からボロネジからワガノワに編入してきたばかりだそうです。背も高くて容姿にも恵まれ、立ち姿はとても美しいです。リフトは危なっかしいけど、学生にはよくあることだしこの位ならば…と途中までウキウキしていたのですが、しかし、見せ場の第2幕のパ・ド・ドゥにて、テクニックの致命的な弱さが露呈しました…。跳躍に距離がないのでマネージュ(舞台一周)がなかなか前に進めず、そして普段はきれいに伸びている爪先まで、なぜか跳躍の時は緩んでしまっており、観ていて痛々しくなってしまいました…。しかし、飛距離のある跳躍は現校長のツィスカリーゼの得意とするところなので、これからスパルタで鍛えてくれれば、ロシア・バレエの未来も明るそうです。
マーシャの子役はアンゲリーナ・カラムィシェワ。既に美人さんですが、アイメイクがきつかったので、かわいらしい演技と若干違和感でした。ワガノワ比で、ポワントは弱めで、アラベスクやソテにしても、そこまで脚を高々上げることはありません。個人的には、2~3年生のうちはそこまで脚を上げなくても…と思うので、今後の成長に期待です。

その他、個人的に一番気に入ったのは、トレパックを踊った男の子です。女性2人・男性2人の踊りなので、キャスト表からはレフ・ペトロフかアンドレイ・ラグネンコのうちどちらかわからなかったのですが、公演後知り合いに聞いたところ、ペトロフの方ではないかとのことです。
ハレーキンはイタリアからの留学生のダヴィデ・ロリッキオでしたが、ハレーキンには珍しい力強さがありました。コロンビーヌはアナスタシア・スミルノワ。個々のパを人形っぽくこなしていましたが、もっと演技が大げさでもいいのになーと思いました。雪の精はマリア・ペトゥホワとスズキ・カノンさんでした。二人の踊りの系統はちょっと似ているのですが、スズキ(鈴木?)さんの回転には素敵な余韻があり、ペトゥポワは腰の強そうなダイナミックな跳躍でした。パ・ド・トロワは、マリヤ・コシュカリョーワ、ポリーナ・ザイツェワ、ムーサ・スルターノフ。女の子の片割れは、前述の「そこまで脚を上げなくても…」でしたが、この年齢にして観客席へ笑顔を振りまくことを忘れない舞台度胸は見事でした。

この冬、ボリショイ、モスクワ音楽劇場とで『くるみ割り人形』を観てきましたが、ワガノワ・バレエ・アカデミーの『くるみ割り人形』は物量作戦の勝利というか、第2幕(第1幕2場)ではネズミ約18匹(すみませんとうろ覚えです)に歩兵14人・騎兵8人、そして雪の精32人と、プロのカンパニーにはなかなか難しい、贅沢な出演人数です。これだけの数の少年少女の努力が舞台上に満ちているとなると、そのマイナスイオンたるやという感じです。



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by jicperformingarts | 2016-12-31 22:20 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2016.12.28 ボリショイ・バレエ『くるみ割り人形』

マルガリータ・シュライナー
クリム・エフィーモフ


毎年、この時期のボリショイ・バレエはくるみ割り人形を集中して上演していますが、毎回ほぼ満席なのかすごいところ。しかし毎年になると、だんだん前も観たな…というキャストが増えてくるのですが、今回は、今日がこの役デビューになる若手カップルでした。

シュライナーは、まだコール・ド・バレエ(群舞)ですが、芸術監督がワージエフになってから抜擢が続いている2011年モスクワ舞踊アカデミー卒の期待の若手です。さすがに金平糖の精の踊りは、爪先がぶれがちで手こずっている印象でしたが、破綻なく踊れるだけでもテクニックは確かです。表情が乏しいのと(演技すべき場面ではちゃんと演技しているのですが)、身体からあふれる叙情性はまだこれからという感じがしましたが、容姿も美しいので、今後に期待です。

クリム・エフィーモフは、2014年の日本公演で活躍していたのでご存じの方も多そうですが、ほっそりした容姿の、こちらも期待の若手です。体幹が弱いのか、ザンレールでのマネージュではよろよろしていましたが、ピルエットは軸も正確でした。
この演出は、第2幕の最後、まるで王子とマーシャの結婚式のように盛り上がったところで、マーシャが夢から覚めて現実に戻り、もう王子の声も届かない…というほろ苦いエンディングですが、そういう夢の王子様的な雰囲気は抜群でした。跳躍も軽やかで身のこなしも美しかったので、この美しさを維持したまま、体幹含めもうちょっと筋肉つけてくれたらな~と思いました。

ドロッセルマイヤーは、アンドレイ・メルクリエフ。グリゴロヴィッチ版のドロッセルマイヤーは細やかな跳躍も細やかでない跳躍も多く、かなりハードな振り付けですが、メルクリエフの脚裁きはキレがあり、飄々とした魔法使いのような雰囲気を醸し出していました。





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by jicperformingarts | 2016-12-28 22:55 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2015.1.3夜 ボリショイ劇場「くるみ割り人形」

アンナ・ニクーリナ
セミョン・チュージン

 以前、ボリショイ劇場新館でこのグリゴロヴィッチ版のくるみ割り人形を観た時は、少し寂しい演出だなと思ったのですが、今回は、群舞など含め、この演出の素晴らしさを再認識しました。私は、昔のボリショイ劇場をよく知らないので、過去のボリショイ劇場と比べてどうかはわかりませんが、単純に、ダンサーに力を与えてくれる舞台なのかなと思います。そういうハコは、世界でも希少だと思います。

 実は、アンナ・ニクーリナは数年前にソロで一度観ただけなので、その時「たおやかで美しいけれど、ふらふらしてるなあ」という印象をずっと引きずっていたのですが、ポワントが強くなっていて驚きました。回転の際も軸が安定しているので、一回転ごとに、美しい肩から腕のラインをしっかり見せてくれます。
 グリゴロヴィッチ版の金平糖の精の踊りは、ダンサーいじめかと思うほど難しく、必死の形相で踊るダンサーも目にするほどです。ニクーリナも、さすがに中盤のイタリアン・フェッテ~ピルエットを繰り返すところは、余裕がなさそうでしたが、この山場を終えてホッとした様子を見せず(つまり集中が切れることなく)、持ち前の抒情性醸し出してフィニッシュしていました。


 チュージンも、高いテクニックを上品に見せることができる、とてもいいダンサーだと思います。マネージュの時は、ボリショイのこの大きい舞台を回りきる!という気合いを感じました(笑)


 この大きな舞台を使い切る!という気合いは、群舞にもあった気がします。雪の場にしろ、花のワルツにしろ、群舞の数はそれほど多くありません。花のワルツは男性もいるので寂しいとは思いませんが、以前新館で観た際は、この場面を広い本館でみたら、空間がスカスカになるのでは…と思ったのですが、本館の方が、群舞一人一人の動きの大きさが迫力で、むしろ今回の方が舞台が狭く感じたほどです。

 第2幕の民族舞踊は、全員2人ずつのデュエットです。数が少ないということで、正直舞台負けしている踊りもありましたが…。とりあえず、スペインのマリヤ・ミーシナの回転は小気味よかったです。花のワルツの方が、セメニャチェンコ、アブドゥーリンなどなど全般にキャストが豪華で、どちらかというと、彼らをソロで観たかった、と思いました。



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by jicperformingarts | 2015-01-15 01:25 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)


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