ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
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カテゴリ:公演の感想(バレエ)( 154 )

2017.6.24(夜)ボリショイ・バレエ『椿姫』ザハロワ&ロチキン

スヴェトラーナ・ザハロワ
デニス・ロチキン

 個人的には黒のパ・ド・ドゥが不発だったので、終わりよければ…の逆になってしまいましたが、クラシックの申し子であるザハロワがこの役を踊るとこうなるのか~という新鮮さがあり、いい舞台だったなと思いました。
 さすがの美しさです。プライドも高そうですが、青のパ・ド・ドゥで、アルマンの髪に触れるところは、恋に対する期待というか憧れが上回った瞬間が見える表情で良かったです。パトロンからの贈り物の首飾りを投げ捨てるところは、パトロンへの嫌悪すら感じる位に床に叩きつけていて、乙女な面をちらほら感じました。続く白のパ・ド・ドゥでは、病気を含む未来に対する不安も、安らぎを得た喜びも特になく、心の声はまったく感じませんでしたが、クラシックとしての美しさにより醸し出された透き通るような静けさで、これがマルグリットの本質なのかと思わせる説得力があります。
 この白のパ・ド・ドゥの静寂と、アルマンとの父とのやりとりの激しさとの対比が際立っていました。まだ全幕通して躍り込んでいるわけではなさそうですが、ステップの一つ一つの鋭さに、この役にかける気合いを感じます。もちろん舞台上では、アルマンへの愛情の強える手段として機能しています。なお、公演のオブラスツォーワは両肩丸出しになるようにショールを羽織ってアルマン父を迎えていたのですが、ザハロワはちゃんと肩を隠していて立ち姿にも貞淑さがあります。アルマン父が、マルグリットに対する偏見を改めるのも納得です。
 しかしこの場面がザハロワ演じるマルグリットの演技の盛り上がりの頂点だったでしょうか…。第3幕では、葛藤のようなものはあまり見えませんでした。高級娼婦の仮面の下は自我を強く持てなかった女、という人物像も、マルグリットとしては十分アリだとは思うので、舞台の満足度がそれで大きく下がったということはありませんでしたが。

 ロチキンは、舞台脇に座るところでは、いつもお行儀良く体育座りなところがツボでした。そして、目の下のクマが第3幕の荒んだ場面にぴったりです。圧倒されるほどの情熱、とまではいきませんが、マルグリットへの愛情もしっかり見えます。かなり体格がいいので、ノイマイヤーのリフトはかなり難しいものの、その長身で迫力を補っていました。あまり着地時の地響きもなかったです。

 夜公演のマノン役はエカテリーナ・シプーリナ、デ・グリュー役はルスラン・スクワルツォフ。アルマン父が訪問する場面で、アルマンとの別れ話を承諾しようとするマルグリットにつきまとうマノンには、悪魔のささやきのようなエグさがあり良かったです。
 ガストンはミハイル・ロブヒン。君なら「美女と野獣」の方のガストンもいけるよ、というぐらいマッスルマッスルした外見と踊りでした。でも昼・夜公演とも、アルマン役とデ・グリュー役が割とみなさんきれい系だったので、この位男臭い方がバランス取れていいのかな~と思いました。



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by jicperformingarts | 2017-07-08 11:32 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.6.24(昼)ボリショイ・バレエ『椿姫』オブラスツォーワ&アフチャレンコ

エフゲーニヤ・オブラスツォーワ
アルチョム・アフチャレンコ

 ノイマイヤーの『椿姫』です。第1幕までは結構いいかも…と思いながら観ていたのですが、第2幕以降はあまり盛り上がれませんでした。
 オブラスツォーワのマルグリットは、上流階級紳士の鼻毛を抜くのが上手そうというか、「彼女は僕の天使だ」と勘違いさせる手腕が比類なさそうなコケットリーです。ただ、第一幕の劇中劇の時点で「私にもデグリューのような人が現れないかしら」という感じだったりと、女一人で生きてきたプライドはあまり感じません。きめ細やかな演技を目指しているのは伝わってくるのですが、時折人物造形に一貫性がないような?と感じるところもちらほらありました。

 アフチャレンコは、純愛の勢いそのまま突っ走る第一幕までは良かったのですが、第3幕でマルグリットを辱める暴挙にでるまでの心理描写に説得力があったかというと…。テクニック的にはアフチャレンコなのでもちろん素晴らしいですが、この端正さが今回は仇になったような気もします。

「マノン・レスコー」の劇中劇として度々登場するマノン役はアンゲリーナ・カルポワ、デ・グリュー役がアルチョーミィ・ベリャコフ。二人とも美しいですが、マルグリットのモノローグを補完する存在としては機能していなくて残念です。
 アルマンの父親役はアンドレイ・メルクリエフ。歩き方からしておじいちゃんで芸が細かいです。オブラスツォーワの、アルマンへの愛を訴えかけるところに切迫感がなく、え、これでアルマン父は心を動かされるの??となってしまい、感動し損ねました。

 個人的には夜公演の方が気に入ったので、夜公演の方の感想を丁寧に書きます…。



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by jicperformingarts | 2017-07-05 19:35 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.6.23 マリインスキー・バレエ『Le Divertissement du roi/イン・ザ・ナイト/シンフォニー・イン・C』

現代作品によるトリプル・ビルですが、いずれもある意味クラシックより上品な作品です。楽しめた公演でしたが、マリインスキー・バレエの層の薄さが浮き彫りになった公演でもありました。

Le Divertissement du roi
 意味としては「王様のディベルティスマン」ですが、ラモーによる17世紀後半の音楽に乗せて個々の小品がつらつらと続いていく、ルイ14世時代のフランス宮廷の様子を再現したような作品なので、フランス語のままの方が、作品の雰囲気がよく伝わると思います。
冒頭、いきなりスカート姿の王様と4人の貴族(御学友?)が登場し、荘重で美しくはありますが、現代人の目には舞踊的にはかなり物足りない振付で、これが約30分続いたら退屈だな~と思っていたのですが、その後のオランダ風やらゼフュロスやらの踊りでは、優美さの平均値ならパリ・オペラ座の向こうも張れるマリインスキーの男性陣に合った振付けで、見せ場もそれなりにあり、楽しめました。バランシンの「ルビー」のような手をひらひらさせる振りや、脈絡なく登場するカタツムリなど、微妙なやる気のなさがいいアクセントになっています。
 王様役はフィリップ・スチョーピン。跳躍時の姿勢の美しさやプリエのなめらかさなど、そして生まれ持ったお公家っぽさがこの役にとても合っています。そのほか、4人の貴族の中では、アンドレイ・アルセニエフにコンテンポラリーの可能性を感じました(しかし、目立っていたのは若干踊りがこの作品の雰囲気に合ってなかったからでもあるので、一概に褒め言葉とは言えません)。

イン・ザ・ナイト
アナスタシア・マトヴィエンコ&フィリップ・スチョーピン
エカテリーナ・コンダウーロワ&エフゲニー・イワンチェンコ
ヴィクトリア・テリョーシキナ&ユーリ・スメカロフ

 まずスチョーピン、連投お疲れ様です。そして昨日全幕で主要な役を踊ったばかりのイワンチェンコ、スメカロフもお疲れ様です。
 最初のペアについてはみずみずしさがイマイチで、二組目の似たような踊りになってしまっており、しかし二組目のような円熟味もなく…という印象でしたが、ダンサーのせいと言うよりはこんな日程で踊らせた事務局のせいという気がしなくもありません。
 三組目では、テリョーシキナから熱演したい気持ちは伝わってくるのですが、抑制的な振付の中では時に浮いてしまうというか、もう少し水面下での激情を感じさせて欲しいです。

シンフォニー・イン・C
 マリインスキー・バレエのこの作品は大好きです。4組のペアが、それぞれ男女2人ずつを従えて踊ったあと華やかにフィナーレ、という構成です。
 Allegro vivo(オレンジ)はオスモルキナとジュージン。久々に観たオスモルキナですが、持ち前の明るさが健在でうれしいです。そしてエシャペで2番に立ったときの幅がびっくりする位広くて、コンパスの違いを再認識…。
 Adagio(グリーン)はアナスタシア・コレゴワとアンドレイ・イェルマコフ。コレゴワは、マリインスキーにあっては凡庸なソリストという評価にならざるを得ませんが、全幕主演の翌日でもしっかり踊れるスタミナはあるのだなと思いましたし、それゆえ貴重な人材だと思います。
 Allegro vivace(グレイ)はオレーシア・ノヴィコワとエルネスト・ラティポフ。ラティポフも6月20日までモスクワ国際バレエコンクールに出てたのにお疲れ様です。でもノヴィコワのサポートなら、お疲れでもこなせるか~と思うくらい、華麗な音楽をさくさく裁いていくようなノヴィコワの踊りは、自立していてパートナーへの負担も少なそうです。
 もう一度Allegro vivace(ネイビー)で、ナデジタ・ゴンチャルとアレクセイ・ティモフェーエフこのペアだけイマイチでした。この作品、男性ソリストにとってはそこまでの超絶技巧はないので、安心してマリインスキーの男性ソリストの洗練・優美が堪能できるはずなのですが、ティモフェーエフだけ音の遅れや、着地の乱れが目につきました。この曲は、グレイのAllegro vivaceよりも軽やかさが求められるにもかかわらず、なぜズラータ・ヤリニチとニカ・ツィフヴィタリアというアレグロ向きではない二人(役によってはいいダンサーです)で脇を固めたのかなあ…と疑問です。



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by jicperformingarts | 2017-07-03 07:03 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.6.22 マリインスキー劇場『海賊』

アナスタシア・コレゴワ
エフゲニー・イワンチェンコ
ウラジーミル・シクリャロフ
エレーナ・エフセーエワ

 久々に全幕の「海賊」を観ましたが、やっぱり面白いです。個人的には、イワンチェンコが脚の線含め若返っていてびっくりです。1992年ワガノワ卒ということは、現在42歳くらいのはずですが、多少跳躍の高さに衰えはあるもののとても40過ぎには見えません。そして、メドーラを高々と持ち上げるリフトも、全然腕がプルプルしていないのがすごいです。思わずオペラグラスで確認してしまいました。さすが、長年ロパートキナや他の長身のマリインスキーの女性ソリストを持ち上げ続けて何十年怪我なしなだけのことはあります。加えて、若手には出せない海賊の頭領としての貫禄もあります。

 メドーラはコレゴワでしたが、花園の場で、快活な音楽なのにテロ~ンとした踊りなのはいかがなものかと思いましたが、身体の線はきれいです。
 アリ役のシクリャーロフは客席からの歓声がとても大きかったです。ただ、特に空中での回転で軸がぶれがちだったり、そして着地音がとても大きいので、また怪我をするんじゃないかと不安になる踊りです。この役を演じる上では、野性味と従順かつ優秀な部下ぶりのバランスが重要ですが、かなり従順さに偏る印象でした。
 
 ギュリナーラ役はエフセーエワでしたが、動きの一つ一つにいい意味での型があり、日々の研鑽が窺えます。ただ、ミハイロフスキー・バレエ時代の天真爛漫さが失われてしまったようで少し寂しくもあります。これからベテランになる中で、いい意味で肩の力が抜けてくれますように。

 そして、ランケデム役のマクシム・ジュージンがとても良かったです。ディズニーのアニメに出てきそうな軽妙な足取りに、客席からも自然に笑いが出ます。プリエが綺麗なので、一幕のパ・ド・ドゥも軽快です。
 ビルバントはユーリ・スメカロフです。踊りそのもののキレは普通ですが、濃ゆい演技をテクニックの中に織り込むスキルはさすがです。

 オダリスクの三人娘は、ラウラ・フェルナンデス、ヤナ・セリナ、ヴァレリア・マルティニュクでした。フェルナンデスは、ローザンヌ・コンクールでのコンテンポラリーの印象が強かったのですが、要所要所のポーズはクラシックとしても美しく、はつらつとしたいい踊りです。しかし、次のヤナ・セリナの360度いつでも端正な踊りをみると、ベテランはさすがだなと思います。



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by jicperformingarts | 2017-06-29 18:34 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.6.21 ボリショイ・バレエ『オネーギン』カプツォーワ&スクワルツォフ

ニーナ・カプツォーワ
ルスラン・スクワルツォフ
アルチョーミィ・ベリャコフ
ダリア・ホフロワ

 原作も音楽も舞台もロシアでありながら、ロシアのカンパニーでこの作品をレパートリーに持っているのはボリショイ劇場だけです。私はこんなブログをやっている位ですから、ロシアバレエに強い愛着がありますが、しかしやはりこの作品はロシアのカンパニーにはハードルが高いなと思いました。

 タチヤーナ役のニーナ・カプツォーワは、ボリショイ・バレエの中でもベストかそれに近いタチヤーナだと思います。手紙のパ・ド・ドゥでは、リフトの盛り上がりからの終盤にかけての表情・演技がとてもよかったです。ただ、細かいステップはまだまだ浅く、突如クライマックスになるので、その身体能力には純粋に感嘆はしますが、観客として自分はその起伏についていけなかったところがあったので、もっとそこに至るまでの一つ一つの振りに緊張感が出てくれればなあという気がしました。第2幕のソロでも、冒頭からオネーギンへの当てつけがましさ全開だったりと、全体にもう少しジワジワ感が欲しかったです。
 なんだか渋い感想になってしまいました。第2幕最後、レンスキーを殺したあとのオネーギンを見つめるところで、オネーギンを露骨に責めるような目線だったので(なまじカプツォーワに目力があるだけに…)、自分の気持ちが冷めてしまったせいもあります。この辺は完全に個人的好みなので、あのまなざしに感動した観客もいるはずですが、でもやはり、非難の視線であれば、オネーギンの心には突き刺さらなかっただろうと思ってしまいます。
 なお、タチヤーナは第2幕まではお下げ髪やストールでうなじが見えにくいのですが、第3幕は髪を結い上げています。カプツォーワは首から肩にかけてのラインがため息が出るほど美しく、このラインだけでもう貴婦人への変貌についての説得力は十分です。

 スクワルツォフは、第1幕から攻撃性ゼロというか弱々しいオネーギンで、でも舞台上でやってることは攻撃的という、ちぐはくなオネーギンでした。ですので、第3幕で登場したときと、第1~2幕までの違いがよくわかりませんでした。そういえば、第3幕も黒髪のままでした。原作設定ではまだオネーギンは26歳ですから…さすがにロシア人としては中年のようなオネーギンは受け入れられなかったのでしょうか…。

 あんまりオネーギンはいいところがなかったのでオリガとレンスキーにいきます。ホフロワの第2幕の小生意気さは素晴らしかったです。そしてレンスキーのアルチョーミィ・ベリャコフは容姿も動きもそれはそれは美しいです。ただパの一つ一つに詩人らしい叙情があったかというと微妙です。手袋を投げつけるまでの悶々とするところは良かったですが、決闘の前も、オリガには嫌悪を・タチヤーナには敬愛を、という対比が明らかではなかったので、最期の別れにも余韻がありませんでした。
 
 グレーミン公爵はエゴール・フロムーシン。これではオネーギンはとても太刀打ちできない…と思わせる、包容力溢れるダンディーな貴公子ぶりでした。そして、第一幕の民族舞踊の迫力は、さすがに他のカンパニーでは観られない水準です。



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by jicperformingarts | 2017-06-27 19:12 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.6.18 ロストフ音楽劇場バレエ『雪娘』

ヴィタ・ミリュキナ
エリザベータ・ミスレル
アルベルト・ザグレトディノフ

 元ボリショイ・バレエのペレトーキンが昨年制作した全二幕のバレエです。音楽はチャイコフスキーの『雪娘』をベースに同じくチャイコフスキーの名曲をつぎはぎしていましたが、指揮がアンドレイ・アニハーノフだったので、音楽だけでも堪能できました。
 冬の凍った心をもつ雪娘が、人間の世界でミズギリという青年に恋をすると、その途端に融けて消えてしまう、というロシアの童話をもとにしたバレエです。なお、このミズギリにはクパーワという相思相愛の恋人がいたにも関わらず、雪娘に一目惚れしてクパーワを捨てたものの雪娘はあっさり死んでしまい(しかも森の中で)、クパーワはレーリという別の青年とまとまるという、ほんのりラ・シルフィード的な要素もあります。

 チャイコフスキーだけでなくリムスキー=コルサコフの有名な楽曲もあるためか、またはバレエ化しやすいモチーフであるためか、この作品をレパートリーに盛っているバレエ団も少なくないです。この版の演出上の特徴としては、クパーワをかなり大きく扱っていて、ほぼ雪娘とW主役です。雪娘はあっさり第2幕の前の方で融けてなくなってしまうのですが、その後、春の訪れを祝うクパーワとレーリ、民衆の華やかな踊りが続き、舞台の盛り上がりのピークがここに来ます。そして非常にロシア的なアポテオーズで締めくくりだったので、冬が去って春が来たという自然の理を感じるというか、悲劇ながら後味が良い演出でした。

 衣装は、雪娘の人間界での衣装だけ「ん??」でしたが、他は基本ロシアの民族衣装ですので、当然ロシア人ダンサーにお似合いです。また、装置はシンプルながら、第2幕冒頭の森の場面は素敵でした。

 雪娘はヴィタ・ムリュキナ、小柄でアジア系の容貌です。跳躍は高いですが、妙なタメがあり、流麗とは言いがたいでしょうか。妖精らしさはないので、クパーワとの対比が明らかでなく、ミズギリが一瞬で心を持っていかれたことに対する説得力は微妙です。
 クパーワはエリザベータ・ミスレル。功労芸術家なのでベテランの方なのでしょうか。登場してすぐのソロが『白鳥の湖』のルースカヤだったのですが、若干音楽の叙情性に負けている感があり、第2幕の祝祭的な音楽で華やかに踊る方が本人はやりやすそうでした。ただペアテでダブルを入れる度に軸がかなり傾くのが惜しいところです。
 ミズギリはアルベルト・ザグレトディノフ。長身で体格は良いのですが、それだけに踊りに力強さがないのが惜しいです。変形リフトが多い振り付けだったので、てこずってる感がちらほら見えました。

 演出が割と良かったので、ダンサーに対しては辛口になってしまいました。


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by jicperformingarts | 2017-06-24 14:24 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.4.16 マリインスキー・バレエ『フォーキン・プロ』

『ショピニアーナ』
ダリア・パヴレンコ、アナスタシア・マトヴィエンコ、ザンダー・パリッシュ
 10年振り位にパヴレンコを観ましたが、自己陶酔感にびっくりしました。年齢的なものもあってポワントも弱くなってしまいましたが、ロマンティシズム溢れるショパンの音楽を、かなりゆっくりしたテンポで、いい意味でねっとり踊ってくれました。なんというか、むわっとした熟女感があり、シルフィード達を率いる貫禄は十分です。
 ザンダー・パリッシュも、跳躍の時にフリーレッグがぐらんぐらんするのはいかがなものかと思いましたが、細心の注意がうかがえるサポートで、妖精達から歓待されるのも納得の、夢見る詩人の風情です。
 という中、マトヴィエンコは美しいものの、心を閉ざしたような機械的な踊りで残念でした。

『薔薇の精』
ワシリー・トカチェンコ、クセニア・オストレイコフスカヤ
 トカチェンコは勢い余って着地でよろめく時も数回あり、人外の魔性感はありませんでしたが、音楽の華やかさに見合うみごとなバネです。オストレイコフスカヤも、いくつになっても少女のような佇まいで眼福です。

『瀕死の白鳥』
カテリーナ・チェブィキナ
可もなく不可もなくでしょうか。肩が意外と堅かったです。

『シェヘラザード』
ヴィクトリア・テリョーシキナ、ダニラ・コルスンツェフ
 テリョーシキナのゾベイダは、一つ一つのポーズの端正さ、音に合わせてさらに身体のラインを引き絞るところ、そして絶妙な音ハメなど、この役ってダンスそのものでこんなに魅せられるものなんだな~という新鮮な驚きを与えてくれるゾベイダでした。わかりやすい恍惚の表情やクネクネ感はありませんが、宦官から鍵を奪って扉を開けるところは、これは初めての逢瀬じゃないんだろうなあ、と予感させるほど、沸き立つ気持ちが伝わってきます。そして、命を賭けるならこの程度の快楽では足りないとばかりに、金の奴隷や群舞をあおる目力もさすがです。おかげさまであおられた舞台全体が盛り上がりました。
 コルスンツェフは、ゾベイダへの愛というか崇拝に溢れており、こんな純朴な金の奴隷があっていいのだろうか、と途中まで思っていました。が、後半、愛するゾベイダに「もっと踊れるわよね?」とばかりに顔をのぞき込まれ、それに応えようとするかのように踊る姿を見ると、変に魔性の存在ぶるよりも、この人にはこういう金の奴隷の方が合っているなとしっくりきました。1992年バレエ学校卒ということは、とうに40歳を超えているわけですが、主役として舞台を盛り上げる水準のテクニックは保っている一方、体力的にはさすがにそこまで余裕はなくなっているからこそ、渾身!という感じが出ており、「そうまでしてゾベイダの期待に応えたいか~頑張れ~」と応援したい気持ちになりました。


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by jicperformingarts | 2017-04-25 19:26 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.4.15 モスクワ音楽劇場バレエ『アンナ・カレーニナ』

ヴァレリア・ムハノワ
ドミトリー・ソボレフスキー

 チューリッヒ・バレエとの共同制作で、そして来シーズンはミュンヘン・バレエでの新制作も予定されているクリスチャン・シュプックの新作です。衣装含めて洗練された演出ですが、ノイマイヤー作品の綺麗な部分(もちろんノイマイヤーはそれだけではないですが)だけを焼き直したようで、正直あまりオリジナリティを感じませんでした。振付上も、真新しい動きはなかったです。
 粗筋上、愛憎渦巻くドロドロ感がないと説得力が出ないので、『アンナ・カレーニナ』自体が洗練されたコンテンポラリー系の演出とはあまり相性良くない題材なのかもしれません。アンナとウロンスキーが不倫関係に落ちるまでもあっさりしており、直接的な性的表現の生々しさと、感情表見(葛藤とか良心の呵責とか)の薄さに違和感がつきまといます。ウロンスキーがアンナに一目惚れしてから人目もはばからずに口説くところも、猪突猛進というよりただ軽薄に見えたためか、これに引っかかったアンナがとても愚かに見えてしまい、第2幕も、自業自得だしなあ…と、アンナに同情する機会を失ってしまいました。アンナ役のムハノワもウロンスキー役のソボレフスキーも、とりあえず、ともに見目麗しくテクニックも確かです。演技は薄味でしたが、ダンサー個人の力量のせいというより演出の影響が大きかった気がします。
 ただ、アンナが自殺を選ぶところは、ありきたりな激しいソロではなく、舞台手前で崩れ落ちてドレスを握りしめて客席(虚空)を見つめるアンナと、舞台奥で踊る家族達という演出でしたが、自分が軽薄にも捨てたものに打ちのめされる感じがよく出ていて秀逸でした。

 ここまでとてもネガティブな感想になっていまいましたが、青年領主リョービンとキティ(アンナの兄嫁の妹)の描き方はとても気に入りました。シュプック版では、この二人がアンナとウロンスキーとの対比として、重要なポジションを与えられていますが、この二人の清々しい(?)愛の物語が、シュプックの抑制された演出に合っていた気がします。特に結婚式の場面は、とても美しい音楽が舞台に染み渡るような振り付けで、この日一番の喝采を浴びていました。



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by jicperformingarts | 2017-04-22 17:25 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.4.15 ミハイロフスキー・バレエ『ドン・キホーテ』

アンジェリーナ・ヴォロンツォーワ
デニス・マトヴィエンコ

 ヴォロンツォーワ、大分ふっくらしてしまっており、踊りが若干重そうでした。ふっくらしたのも元は怪我の影響とのことで、回転等のテクニックも抑え気味でした。32回転フェッテは全部シングルで最後まで腰に手を当てたというもので、最後はよろめいてしまいましたが、愛嬌でごまかした感じです。
 マトヴィエンコは黒髪になっていたので、最初誰だかわかりませんでした(笑)ノヴォシビルスク・バレエの芸術監督ですが、まだ38歳ということで、ヴァリエーションなど、要所要所では高いテクニックをしっかり魅せてくれます。そして、細かく練られた演技の方に好印象でした。
 ドゥリアードの女王はアンドレア・ラッシャコワ。身体のラインの美しい黒髪美人さんですが、きゃしゃな分、デヴェロッペでは脚がぷるぷるしていました。この点で比較すると、第3幕のグラン・パのヴァリエーション(この演出だとデヴェロッペが多用される振付です)のスヴェトラーナ・ベドネンコの強靱な脚から生まれる派手やかさとは対照的です。

 という感じで、実は主役の方々の演技に興奮することはなかったのですが、脇が充実してたのでとても楽しめた公演でした。特に、ミハイル・ヴェンシコフがエスパーダ役で気合いの入ったマント裁きや上体の反り具合で盛り上がりました。アムール役のアンナ・クリギナも、アップテンポな音楽の中で大きな踊りを見せてくれました。鼻売り娘のタチアナ・ミリツェワとマリヤ・ドミトリエンコも、踊りでも演技でも、舞台をより生き生きとしたものにしてくれました。それぞれの役に見所があるので、やっぱり『ドン・キホーテ』っていいな~と思いました。



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by jicperformingarts | 2017-04-21 20:18 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)

2017.04.13 アレクサンドリンスキー劇場『雪の女王』(エカテリンブルク国立バレエ)

ミキ・ニシグチ
アレクセイ・セリヴェルストフ
ラリサ・リューシナ

ペテルブルクで毎春開催されているバレエ・フェスティバル「ダンス・オープン」ですが、今年はバットシェバ舞踊団等に加えて、ロシア国内からエカテリンブルク国立バレエとペルミ国立バレエが招待されています。この日は、エカテリンブルク国立バレエの公演で、芸術監督のヴャチェスラフ・サモドゥーロフによる『雪の女王』でした。
『アナと雪の女王』にあやかってか、ボリショイ、マリインスキーでも『カイとゲルダの物語』のオペラがレパートリー入りしましたが、エカテリンブルクではバレエ化されました。粗筋は、より子供向けにカイとゲルダは仲良しだったが、ある冬の日にトロールが現れカイが撃退したところ、後日、雪の女王が手下のトロールを引き連れて現れカイを連れ去り、ゲルダは彼を探す旅に出て、無事連れ戻すというものです。

元マリインスキー・バレエ出身で、英国ロイヤル・バレエにも移籍して活躍したので、サモドゥーロフをご記憶の方も多いと思います。最近は、ボリショイ・バレエに「ウンディーナ」を振付けたりしていますが、私は彼の振付作品を見るのが初めてだったので、どういう作品なのかなあと期待していました。
実際に観てみると、かなりクラシック寄りで、スパイスにコンテンポラリーという感じです。崩し方は洒落ていて、目に快いムーヴメントです。温室の場面は、センスの良い振付けと、キテレツな方向にお洒落な以上とのバランスが良かったのですが、カイとゲルダが住む村の場面は謎にレトロな衣装・装置で(子供が喜びそうなテイストでもなく)、特に雪の世界とのコントラストをなしているわけでもなく、世界観の作り込みは今ひとつという印象です。

主役は、日本人でしょうか、ミキ・ニシグチさん。久々にエカテリンブルク国立劇場の公式HPをのぞいたところ、いつの間にか日本人ソリストが2~3人になっていました。アンドゥオールも割合しっかりしていますし、ボディ・コントロールも行き届いています。
カイ役のアレクセイ・セリヴェルストフは、ラストのソロは頑張っていましたが、もうちょっと派手さが欲しいところ。そして、これは演出のせいなのかもしれませんが、ゲルダを思い出すはもっとドラマ上盛り上げて欲しいところです。
雪の女王のラリサ・リューシナは、元々舞踊上の見せ場が少ないこともあり、跳躍が重そうだった印象しか残っておりません…。むしろ、アタマンシャ(盗賊の女首領)役のアナスタシア・バガエワの方が、メリハリのきいた動きで舞台を引き締めてくれた気がします。



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by jicperformingarts | 2017-04-17 22:43 | 公演の感想(バレエ) | Comments(0)


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■その他(編集中)
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