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ロシア:劇場のしおり


旧ブログ名:『サンクト・ペテルブルクからのひとこと日記』■サンクト・ペテルブルクやモスクワを中心に、ロシア各都市の劇場トピックスなどをご紹介しているJIC旅行センターのブログです。
by jicperformingarts
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7/13 ノヴォシビルスク国立劇場「イーゴリ・ゼレンスキー・ガラ」

イーゴリ・ゼレンスキー
ウリヤナ・ロパートキナ マリヤ・アレクサンドロワ
レオニード・サラファーノフ イワン・ワシーリエフ 
ナタリア・エルショワ アンナ・ジャロワ イワン・クズネツォフ ロマン・ポルコーヴニコフ など


 ノヴォシビルスク・バレエの芸術監督である、イーゴリ・ゼレンスキーのガラ・コンサート(リサイタル)でした。日本でもおなじみのダンサーが多く出演していたので、少し詳しく感想を書きます。

 まず第一部は『Immortal beloved』(丁度『不滅の恋』という邦訳で同名の映画がありますが)。既に何度かこのバレエ団と仕事をしているエドワード・リヤンの新作です。シャンデリアの残骸のような装置、黒を基調にした空間だったこともあり、「不滅」というタイトルに反し、最後のシーンを観て葬列を連想してしまいました。ゼレンスキーを先頭に、6人の男性ダンサーが踊るところなど、渡り鳥を思わるものの感傷的にならない、ということで、ロシアのべたべたメノドラマ風コンテンポラリーにはないクールさがありました。
 主役のゼレンスキーですが、ものすごいハイスピードで超絶技巧をこなしていましたが、スピードを優先させた結果、伸びやかさは抑えられている印象。

 第2部は小品集です。トップバッターはイワン・ワシーリエフの『スパルタクス』より蜂起の場。元々このバレエ団はグリゴロヴィッチ版『スパルタクス』をレパートリーに持っていることもあり、群舞つきでした。一人一人観ていくと、ちょっと跳躍が弱いかなあとは思うのですが、物量作戦の勝利というか、群舞つきのおかげで迫力はありました。
 次に『ヴェニスの謝肉祭』を踊ったのは、エレーナ・ルィトキナと、イワン・クズネツォフ。クズネツォフは、モスクワ音楽劇場から移籍したばかりです。地方劇場→中央(ペテルブルク・モスクワ)→ヨーロッパという人材流出が止まらない昨今に、彼のこの逆行キャリアは非常に珍しいです。一体どんな手を使ったんだ、とは思いますが(笑)、単純にほっとする事例です。背はそれほど高くはないですが、筋肉質な踊りで、特に終盤にかけてメキメキ調子を上げていくところが頼もしいです。ルィトキナは、ちょっとギャル系で、バレエファンにはイリーナ・ゴールプ系統といった方がイメージしやすいでしょうか。
 そして次がエドワード・リヤン振付の『Distant Cries』ですが、これは作品としてとてもいいと思います。ナタリア・エルショワとロマン・ポルコーヴニコフのパフォーマンスもとても良く、リフトの一つ一つまで堪能させていただきました。
 更にレオニード・サラファーノフとアンナ・ジャロワの『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』と続きますが、割とムキムキした男性陣の続く中、彼のキレの良さは新鮮な魅力がありました。ソロが良かっただけに、サポートの不安定さが残念ですが、アンナ・ジャロワが小柄なだけにコントロールの行き届いた踊りで、破綻なくまとまった演目です。
 そんな感じでわき上がっていた会場を一気に沈黙させた次の演目が、ロパートキナの『瀕死の白鳥』です。言葉を失うほどの美しさといっていいと思います。
 ということで書くこともないので第二部最後の演目に移りますが、このマリヤ・アレクサンドロワとイワン・ワシーリエフの『ドン・キホーテ』は、もりあがりました。12日にモスクワで彼女の『コッペリア』を観て、翌日にノヴォシビルスクで彼女を再び観られるとは(笑)驚きですが、ともかくも、お見事!なキトリでした。深紅の衣装も、扇の使い方も、足裁きも、全てが「盛り上がってちょうだい!」と言っているかのようでした。パートナーのワシーリエフは、片手でアレクサンドロワをリフトしていたり(ちょっと危うかったですが)と、なんといっても『ドン・キホーテ』ですから、何をしてもやり過ぎにはなりませんし、もう存分に盛り上げてください、という感じです。

 そして第3部がロパートキナとゼレンスキーの『シェヘラザード』です。お相手が氷のロパートキナなので、ゼレンスキーも陥落させ甲斐があるんだろうなあと思いました。
 冒頭のゾベイダは艶やかながらどこか厭世的というか、媚びなくても手を伸ばすだけで男がひれ伏すことに慣れきってしまって、今更そういう単調な後宮に何の期待も寄せていない様子。王から貰った真珠のネックレスで宦官をじゃらして鍵を奪うところも、実に鮮やかなお手並みではありますが、特に何らかの衝動があってやったわけではなく、いい暇つぶしにはなる、程度だったように思います。
 そんなロパートキナの演じるゾベイダは金の奴隷と踊るうちに、次第に色々解き放たれていき(笑)笑顔さえ見せるようになるのですが、この笑顔が常軌を逸した情熱を感じさせて、悲劇的な結末を予感させます。そして王に見つかって後宮中皆殺しになった後の彼女の茫然自失ぶりもすさまじく、自害するのも必然という感じでした。ロパートキナのゾベイダはあまり好きではなかったのですが、この公演ではテクニカルな演技以外の情熱が感じられてとても良かったと思います。
 付け足しのようになってしまいますが、こういうロパートキナが観られたのも、舞台上で彼女と対等に張り合える(ちゃんと「金の」奴隷になる)だけの風格がある、ゼレンスキーの功績も大きかったのではないでしょうか。
 
 余談ですが、この日はゼレンスキーの誕生日だったそうで、劇場にはいると、入場客全員にシャンパンの大盤振る舞い、更にご丁寧に祝電ボードのようなものまであって、びっくりしました(笑) この祝電の差出人をみると、ミハイル・バリシニコフ、ナタリア・マカロワといったもはや伝説のダンサーから、パリ・オペラ座、NYCB、ボリショイ劇場、マリインスキー劇場の監督、世界的な指揮者のワレリー・ゲルギエフの名前までありました。
by jicperformingarts | 2009-07-13 18:30 | 公演の感想(バレエ)
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